INTERPRETATION

第50回 食べちゃだめ!

寺田 真理子

マリコがゆく

通訳という仕事柄、食べちゃいけないものがありますよね。

特にウィスパリングをする場合、にんにく料理はご法度です。カレーやキムチなんかもやめたほうがいいでしょう。なにせ、相手のそばにくっついて息を吹きかけ続ける仕事なわけですから(ここだけ読むと「通訳って一体どんな仕事なんだろう!?」と思ってしまいます・・・)。通訳しているときに、にんにく臭かったりしたら最悪じゃないですか。

にんにく料理を食べてしまったら、もちろん、歯を磨いて、ブレスケアグッズなんかも使って何とか被害を最小限にとどめようと頑張ります。でも、瞬間的には抑えられても、なんとなく身体の中でにんにくの存在感が消えないと思いませんか?やっぱり食べないに越したことはないですよね。

とは言いながら。社内通訳で長期になって、上司ともすっかり馴れきった間柄になってしまうと、何の遠慮もなく食べてしまったりするんですが・・・。午後イチでウィスパリングをしなきゃいけないミーティングが入っているのに、ランチに思いっきりにんにくの効いたガーリックパスタをおいしくいただいてしまったり・・・。

被害を最小限にとどめたつもりでも、ウィスパリングの最中に自分でも気づくことがあります。
「うわ~!なんかわたし、にんにく臭いかも!やっぱりあのガーリックパスタはまずかった!ごめん・・・!」
心の中で謝りながらも、ウィスパリングをやめるわけにはいかないので、にんにく臭い息を吹きかけ続けます。もう、我ながら最悪です。

そんな失敗で申し訳ない思いをすることがあるわけですが。時々、思わぬ逆襲を受けることもあります。

あるミーティングのときのこと。ウィスパリングをしている時に、いきなり上司が振り向いてきたんです。訊きたいことがあったらしいんですが、至近距離でにんにく臭い息が顔にかかって・・・。なんか、こう、もわっと・・・。

「や、やられた・・・!」

一瞬、通訳は止まってしまいました・・・。

通訳するほうも、されるほうもやっぱり、食べちゃだめ!

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Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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