INTERPRETATION

「テキストメッセージの英語2」

木内 裕也

Written from the mitten

 先週に引き続き、SMSの英語です。先週はSMSでいかに省略表現や手法が使われているか、そしてスペルミスが無視されているかを説明しました。今週はSMSに見る「生きた英語表現」です。もちろん、英語学習者にとってネイティブスピーカー(特に若者)の喋る英語を真似することは必ずしも望ましいことではありません。私は高校生や大学生の審判仲間がいるのでこう言った書き方のSMSを送ることもありますが、他の人に同じような英語でSMSを送ることはありません。十分に用途をわきまえる必要があることを理解して読んでください。

 Whateverという単語がありますが、これは日常会話だけでなく、SMSでも非常によく使われる単語です。通常は「何でも」という意味です。What do you want to have for dinner?(夕食は何がいい?)と聞かれてWhatever you want is fine with me.(あなたの食べたいもの何でもいいよ)などと使います。しかしもっとくだけた会話では、相手の言ったことを軽く受け流す目的で使われます。皮肉的な意味合いのある表現です。何度も誘っているのに断わってばかりいる友人に、もう一度誘いのSMSをおくると、「今度は絶対に行くね」という返事が届いたとします。もちろん気の知れた友人関係という前提ですが、Whatever… Haha というメッセージを送れば、「期待しないで待っているよ」という程度の意味合いになります。最後にHahaと付け加えるのは、あくまでも冗談だよ、という確認の意味です。

 同じように、Yea right.という風に言う(書く)こともあります。Yesのくだけた表現はYeahと書くのが普通ですが、1文字でも少なくするSMSではYeaと書く人が非常に多くいます。

 とても親しい友人からは、特に目的も無くSMSが届きます。I’m tired、I’m bored(大抵は授業中にメールを送ってくると、こう書いてあります)、I need a napなどたいした内容ではありませんが、そういったメールを通してつい最近学んだのは、Crunkという単語です。CrunkはCrazyとDrunkを合わせた造語だそうです(造語といっても、ほとんどの学生は理解する単語です)。パーティーをして大騒ぎをする、という意味です。

 先週はSMSがいかに省略形を使うか書きましたが、名詞だけのメッセージも珍しくありません。日本にもありますが、Cold Stoneというアイスクリームの好きな友人がいます。彼女からはよく、Cold Stone!とだけ書かれたメールが届きます(時にそれはChipotle!とかかれたメッセージの時もありますが、これはメキシコ料理のファーストフード店です)。そんなメッセージを受け取ったときは、I am at …という意味で書かれたのか、Let’s go to… という誘いなのか、I want to go to…という誘いを求める内容なのか判断しなければなりません。また955!とだけ書かれたメッセージであれば、FMラジオの95.5チャンネルを聞け、という意味になります。この例から分かるのは、メッセージの書かれたコンテキストを把握することです。

 電話をすればあっという間に済ませられる用事も、SMSを使って連絡を取られることが非常に多くあります。新しいコミュニケーション手段といえばそれまでですが、非常に特徴あるコミュニケーションの形態であることは間違えありません。

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記事を書いた人

木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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