INTERPRETATION

業務時間

木内 裕也

オリンピック通訳

9月2日の記事で業務形態について書きました。それと少し似た内容ですが、今回はスポーツイベントにおける業務時間のお話です。

試合結果に直接係左右される仕事には、選手やスタッフのインタビューが思い浮かびます。また、試合結果には左右されないものの、試合が終了しないと始まらない仕事にはインタビューだけではなく、関係者の試合後のアテンド、ドーピングなどのメディカル、会場近くで帰宅する観客に対応するボランティア通訳などが考えられます。一般の会議では「17時に終わります」とか「30分くらい延長するかもしれません」ということはあるものの、選手が試合中に怪我をして長時間に渡って試合が中断した時など、業務終了の時間が大きくずれ込むことはスポーツイベントほどは無いでしょう。

また、試合に直接関係のない、試合前のインタビューなどでも時間はかなり流動的です。例えば「8時から10時の間に待機していてください。その間に15分くらいの記者会見があります」などという案件は非常に多いです。場合によっては結局記者会見が中止になってしまうこともゼロではありません。このような要素は一般の会議よりも非常に多くあります。

国際大会では優勝候補のチームでなかったり、マイナーなチームだと、そのチームの母国メディアしか記者会見に来ないこともあります。そうすると日本のメディアがゼロになってしまい、会見は英語だけで行われてしまいます。誰も聞いていないのに訳をする必要はありませんから、「日本語を聞く人はいないので、訳さなくていいです」となったことも過去にはありました。

試合後のインタビューなどは、遠隔で通訳をすることもあります。つまり、放送通訳のように映像と音声を別の場所に送って、そこで同時通訳をするというもの。それを今度は現地に送り返す、ということを行います。通訳者が1か所にまとまって活動できるので、費用削減にもなるのでしょう。出張が少なくなって嬉しい、という通訳者もいるかもしれません。そんな場合には、試合会場から離れた場所で仕事をしているので、帰路は非常に楽です。しかし試合会場で通訳をする場合、試合終了から1時間くらいたっても、交通機関は大混雑していることが多いです。特にアクセスの悪い会場の場合、タクシーもなかなかつかまりません。つかまっても道が大混雑ということも。すると、ホテルに戻れるのは試合が終わって何時間も経った後、ということになり得ます。

という訳で、スポーツの通訳をする場合には時間にはかなり余裕を持っておいた方が良いでしょう。

Written by

記事を書いた人

木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

END