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第19回 7つの魔法⑥~実績をつくる

寺田 真理子

あなたを出版翻訳家にする7つの魔法

「これまでの経歴を振り返ってみたけれど、どうしても何もアピールできるものが見つからない」という方もいるかもしれません。そのとき、たいていの方は「自分には実績がないからやっぱりダメなんだ」とあきらめてしまいます。いわば「実績の壁」に突き当たってしまうのです。

だけどせっかく企画書をつくってきたのに、ここであきらめてしまうなんて、もったいない!

そこで7つの魔法⑥「実績をつくる」の出番です。

「ない」といってあきらめてしまうのではなく、「ないなら、どうやってつくっていくか」を考えましょう。

実績をつくるには、二つの方向があります。まず一つ目は語学面での実績。そして二つ目が専門知識、つまり原書に関連する内容についての実績です。

一つ目の語学面の実績について考えてみましょう。もしあなたが翻訳学校で勉強してきたのなら、勉強してきた事実も立派な実績です。さらに、どんな些細なものでもいいので、これまで翻訳したことがあれば、それも書き出してみましょう。

あなたのまわりで翻訳の仕事を募集していれば、それに応募してください。募集がない、あるいはレベルが高すぎる場合には、ボランティアでも構いません。翻訳を実際にやってみましょう。

たとえば知人がお店を経営していて、サイトが日本語しかないので英語版が欲しいなら、手伝ってあげるのもいいでしょう。友人が好きな俳優の情報が英語でしか入手できないなら、日本語にして教えてあげるのもいいでしょう。ちょっとした翻訳のニーズは、まわりにたくさんあるはずです。そのニーズを汲み取って、実際に翻訳を手がけていきましょう。

もしまわりでは見つからなくても、SNSを使ってニーズを見つけることができるでしょう。数をこなして、実績をつくるのです。

二つ目の専門知識についても見ていきましょう。たとえば料理の本であれば、あなたが「料理教室の先生」だったら、専門家として任せてもらえる可能性が高くなりますよね。だったら「料理教室の先生」になってしまえばいいのです。

「先生なんて自分には……」と思うかもしれませんが、もう少し気楽に考えてみてください。友人4~5人を家に呼んで、得意料理一皿を教えるだけだったら、できそうですよね?1回だけなら単なるイベントで終わってしまいますが、もしそれを10回くらい定期的に開催すれば、あなたは「料理教室の先生」といえるのではないでしょうか。

得意料理の写真をインスタグラムに載せるのもいいでしょう。多数のフォロワーを獲得できれば、それもプロフィールに記載できます。

要は、発想を変えるということです。「実績がないからダメだ」と自ら将来への道を断ってしまうのではなく、「実績がないなら、どうすればつくれるか」を考えてほしいのです。そして、あきらめずに一つひとつ、実績をつくっていきましょう。

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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