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斉藤先生講演

いぬ

通訳・翻訳者リレーブログ

明治大学、斉藤孝先生の講演をお聞きする。以下、印象的だったことを列挙。

・現在の子供の遊びのメインであるゲームは、視覚と手先の動きのみ
・昔のように体と体でぶつかり合う遊びをしていないと、人間関係の距離が遠くなる。コミュニケーション能力も低下する。

・マッサージでは、「相手の構え」が大切。相手の「体が閉じて」いると、効果はない
・学習にも「構え」がある。それが出来ていないと、教わっていることが吸収されにくい
・斜に構えていると、学びが進まない
・積極性も大切だが、順応することも大切
・相手からの働きかけを積極的に受け入れる、「積極的受動性」がカギ
・「先生の言うとおりやってごらん」と言われてやる「素直さ」が大事ではないか
・それがないと「いわれている情報は聞き取っているが、自分の中に入れていない」状態になる

・五感を鍛えていない=古い力をなくして、脳だけが活性化した状態
・本当に聞いているときは、相手の語りに体が反応して動く。そういうときは言葉も入っていく
・飼い犬にふと目をやると、必ず目を合わせてくる。気配を察している。五感が研ぎ澄まされている。
・五感を研ぎ澄ますには、まず体を動かすこと(ジャンプ、伸び、肩甲骨動かす)
・呼吸法(最後に目を閉じさせ、鐘で笑いを取っていた)
・小さな音を聞き逃さない
・集中しつつリラックス

・自分の好きなことだけをやっていたい→そのまま大人になると、他人との違和感や摩擦を「積極的に楽しんでしまう」ようなタフさやしなやかさが身に付かない。今の子供たちは遊びの中でそういうことをやっていない→子供に四股を踏ませる

・形や礼儀は必要
・「形」とは、身体感覚を研ぎ澄ます砥石のようなもの。形そのままで戦うわけではなく、形から動きが自然に生まれてくる
・「形」を無視するとどうなるか。たとえば箸の持ち方などどうでもいいと言い出すと、何でもどうでも良くなってしまう
・「形」は、最も合理的な動きだからこそ、形になった

・勉強はアウトプットを意識したインプットが大切。これで消極的受動性(聞くだけ)から、積極的能動性(聞いたことをどう生かそうか)という「戦闘モード」になる

・「素直さ」+「覚悟」=学びに必要な姿勢

・今の日本人は、不機嫌になり勝ち。社会のテンポが速すぎる
・積極的にストレスを落とすことが必要なスキルになっている。

・今の人は「一見優しく、真面目」だが、人と本当に触れ合うことをしない。飲み会で語り合うようなことはせず、帰ってからSNSでやりとり。だったらなぜ直接話さないのか
・他者受容性が高くない。相手の変な部分を楽しむぐらいのタフな感性が必要では

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以後パネルディスカッション
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アロマ協会、小知和優子さんの発言

子供を幼稚園に迎えにいったときに、いつも「遅れてゴメンね」と言っていた。園長がそれを聞いて、そうではなく「待っててくれて、ありがとう」と言うようにアドバイスされた。そう言われると子供は「そうか、僕が待っててあげるから、お母さんはお仕事が出来るのだな」と、母親が働くことを肯定的にとらえられるようになる。

斉藤先生の発言

アロマをどう学校教育に広めるか?という質問に対して

・サンプルアロマを作って、無料で配布しては?
・アロマをもらえば、使ってみたくなるもの
・「使った感想を送ると、もう10セット送る」などというシステムにすれば、ますます広がる
・教室で実際に使ってみて、香りの文化を広げれば、生徒の話題になってさらに広がる

アロマを授業でどう使うか?という質問に対して
・詩とアロマを組み合わせてはどうか?
・たとえばリンゴのアロマの中で、藤村の「初恋」を読んでみたらどうか?
・ゆりの香りのなかで、「漱石の夢十夜」(「骨に応えるユリの香り」)を読んだらどうか?
・記憶と香りは直結しているので、強い結びつきが期待できるのではないか

やる気を引き出す方法は?という質問に対して
・自分の中からではなく、外から引き出すやり方が良い
・4人一組になって発表をさせる。一人の発表が終わったら、残る3人はスタンディング・オベーションをしながら「ファンタスティック!」ということを義務付けるとか
・慣れてきたら、全員が終わったところで一番上手だった人を「いっせーの!」で指差すのもいい
・人間は、上手く追い込んでやると、その緊張感を喜ぶもの

初めて直接お話を聴いたが、思ったより甲高い声だった。静岡のご出身と言うことだが、静岡のアクセントなのだろうか、ちょっと西のほうの言葉の響きがあった。

腰が低い。きちんと礼を尽くすべきところは尽くしている。でも上機嫌で本当に楽しそうに話す。ここでみなさんにお話できて、何て楽しいんだ今日は、という感じが伝わってきた。でも、それも「スキル」なのだと思う。

本を読んで受ける印象は「勝間さん」系なのだが、実際はちょっとボケが入った、親しみやすいキャラを演出していらっしゃった。上手に聞き手を巻き込み、笑わせながら聞き手に自分の話を受け入れる構えを作らせたうえで、無理なく自分の主張を伝えていく。実に上手いと思った。

いつもこちらの想像を超えた球を投げ返してくる。アロマの学習効果では、少し前に「アロマと計算などを組み合わせると成績が上がる」と言っていたし、だれもがそれぐらいは思いつくが、それをはるかに超えるアイディアを出して、聞き手をうならせてくださった。

コミュニケーションと言うのは、想像以上に「体」の果たす役割が大きい。頭で何でもかんでも考えがちだが、総合的なコミュニケーション力を鍛える上でも、体は大事だと思う。

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記事を書いた人

いぬ

幼少期より日本で過ごす。大学留年、通訳学校進級失敗の後、イギリス逃亡。彼の地で仕事と伴侶を得て帰国。現在、放送通訳者兼映像翻訳者兼大学講師として稼動中。いろんな意味で規格外の2児の父。

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