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This is Where I Leave You

みなみ

通訳・翻訳者リレーブログ

 久しぶりに、本当に久しぶりに、日本語・英語を問わず、「おもしろい小説に出会った」という気持ちになったので、ご紹介させていただきます。作者のJonathan Tropperのことは知識不足でまったく知らなかったのですが、図書館の新刊コーナーに置かれていて、装丁がかわいらしかったので借りることにした本です。後から知ったのですが、著作がたくさんあって、なかなかの人気作家のようです。
 「This is Where I Leave You」の主人公は、既婚、子供なしのJudd。Juddの妻、JenはJuddの上司と浮気をしており、そのまさに現場にJuddが踏み込んでしまったために、現在、2人は別居中。しかも、妻の浮気相手である上司とけんかして、Juddは仕事も失い、家を失い、いわゆるどん底状態。ちょうどそんなときに、癌の闘病生活を続けていたお父さんが亡くなり、Shivaというユダヤのしきたりのために、7日間、実家に戻り、喪に服します。Juddのお母さん、お兄さんのPaul、お姉さんのWendy、弟のPhillip、そのパートナーたちとの久しぶりの再会、衝突、そして再度の別れ…。というお話。劇的な事件が起こるわけではないのですが、一つひとつのセリフや描写にリアリティがあって、時々プッと吹き出し、時にはジーンと心に浸みるという感じでした。
 がんこで、ぶっきらぼうで、子供たちが大きくなってからはあまりやりとりもなかったお父さんですが、ことある毎に思い出として現れ、だれかれとなく、「I miss Dad」とつぶやきます。どうして、お父さんが生きている間に、もっともっと会って、話をしなかったのだろう、という後悔の念にかられると共に、久しぶりにあった兄弟たちとのつながりを改めて感じながら、Shivaの7日間が過ぎていきます。
 読み終わって、家族とか、夫婦とか、そういったものがすごく愛おしくなって、もっと大切にしなくちゃ、と思ったのでした。本の後書きによると、作者はこの本の映画化の作業に入っているそうです。どんな配役になるのかな。女たらしで、適当で、でも憎めない末っ子のPhillipにはJohnny Dipがいいような気がするけれど、そうすると、やたらと豪華な配役になってしまいますねえ。
 ほんとに、いい小説でした。始めは露骨な性描写にちょっとげんなりしていたのですが、読んでいくうちに、ストーリーに引き込まれて、ああ、まだ終わらないでー、と思いながら、読み終わってしまいました。英語自体も非常に分かりやすい文体で、読みやすいです。
 最後に、私が「そうそう、まったくそのとおり!」と共感した文章をご紹介。
…You never know when it will be the last time you’ll see your father, or kiss your wife, or play with your little brother, but there’s always a last time. If you could remember every last time, you’d never stop grieving. (p. 156)

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記事を書いた人

みなみ

英日をメインとする翻訳者。2001年からニュージーランドで生活。家族は、夫(会社員)、娘(小学生)、ウサギ(ロップイヤー)。

END