INTERPRETATION

第45回 テクノロジーの発達と近未来について考える

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

先週は、国際会議の通訳でヘルシンキに行っていました。ふだんはイギリスと同じく、雨が多くてそれほど気温も上がらないとのことですが、この1週間は素晴らしい天気に恵まれ、学びの多い充実した日々でした。シリコンバレーを含む、世界最先端の研究開発についてのスピーチや数々の著名企業のトップの話を直接聞ける機会があるというのも通訳という職業の魅力のひとつだなと実感しました。そこで今回は最近話題になるテクノロジーに関する用語を取り上げます。

・VR  Virtual Reality(仮想現実/人工現実感)。英語でも日本語でもVRという略語が使われます。VRのヘッドセットを付けるとゲームの世界に入り込んでプレイしたり、世界の名所を実際に訪れているような感覚で観光したりできます。近い将来遠くにいる人と同じ部屋で目の前にいるかのように一緒に遊べるようになるそうです。現在出ている商品は割と大きくて装着に違和感があるんじゃないかな、と思えるようなサイズですが、10年後にはふつうのメガネのようなサイズにまで小さくなるだろうと、フェースブックのザッカ―バーグCEOは予測しています。

・AR Augmented Reality(拡張現実)。VRとセットで出てくることが多いのですが、こちらは現実に存在するものにコンピューターがさらなる情報を加えているという違いがあります。「ターミネーター」や「アバター」などのSF映画や「ドラゴンボール」「電脳コイル」などのフィクションの世界で当たり前のように使われていた技術が現実化したとも言えます。これが進化すると、街を歩いているだけで、いつ誰に自分の情報をどこまで読み取られているか分からず、ちょっと不安になるかも。

・自動運転車 autonomous car。autonomousの代わりにdriverlessやself-drivingが使われたり、carの代わりにvehicleが使われたりする。人間が運転しなくても自動で走行する自動車。現在、公道での走行実験が先進国で行われている段階。今でも自動駐車や部分的な自動運転(自動ブレーキなど)は商用化されていますが、運転手が不要な自動運転車を商用化するには100%に限りなく近い信頼性が必要で、実用化までにはまだ何年かかかりそう。また法改正も必要。自動運転車が一般化すると、一昔前の電話オペレーターやエレベーターのオペレーターが姿を消したように、ドライバーがこの世から消える日が来るかも?!

・Uber(ウーバー)。日本では規制上普及していませんが、世界の400都市以上で展開されているライド・シェアサービス。タクシー会社から敵対視されているけれど、実際はこれまで自分で運転していた人がライドシェアをするようになったケースのほうがはるかに多いらしく、交通渋滞・大気汚染の緩和や交通事故の減少に貢献しているという。

車の所有者とのライドシェア以外に、Airbnb(下記参照)のように自分の車(資産)を使わない間人に貸し出すというサービスが一般化する日も近いかも?! その場合は、レンタカー業界との競合にもなるでしょうが、車の販売に与える影響のほうが大きいかもしれません。「車の所有より共有」という流れは止めることができないでしょう。

・Airbnb(エアビーアンドビー)。AirbnbのAirは「飛行機」で、「飛行機に乗った後、B&Bに泊まる」という意味だと思っているとすれば、私と同じく勘違いです! 創業者ケビア氏のTed talkで知りましたが、元々は空き部屋どころか単なる空きスペースにAirbed(空気で膨らませるマットレス)を置いて人を泊まらせたことからスタートしたビジネスだそうです。こちらはホテル業界から敵対視されていますが、既に190か国以上で展開されていて、ホテル供給の不足を補う役目も果たしているそうです。

・Sharing economy(共有経済)。代表例が前述のUberやAirbnbですが、crowdfunding(クラウドファンディング、不特定多数の人々がネット経由で行う資金提供。クラウドがcloudでないことに注意!)やcoworking space(コワーキング・スペース、単なるオフィスの共有だけでなく、各個人が独立して働きながらも情報交換なども行って相乗効果を生み出している)など、様々な分野で広がっています。通訳者・翻訳者もbookONEのようなアプリを通して予約されるようになる日が遠くないかもしれません。

以上、テクノロジーに関する用語を取り上げました。ご存知の内容も多かったと思いますが、少しでも学びがあれば幸いです。

あまり技術がどんどん発展していくと、なんだか怖い感じもしますが、技術の発展を止めることはできないので、そのことを認め、新しい技術を進んで学び、それが利用される社会に適応していくことが大切だと思います。自動運転車をオンデマンドで気軽に使い、ライドシェアも当たり前になる時代が来れば、社会のあり方もずいぶん変わるだろうなと想像を膨らませています。

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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