INTERPRETATION

第121回 最近の若者の傾向とテクノロジーの関係は?

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。毎日どんより厚い雲に覆われていて、太陽の光が恋しいイギリスからお届けしています。

さて、今週も英エコノミスト誌から気になった記事を紹介します。まずはLeaders欄のCutting adolescents’ use of social media will not solve their problems、そしてInternational欄のTeenagers are better behaved and less hedonistic nowadaysです。

まず最初の記事では最近の若者がスマホ・SNSに費やす時間と精神状態の相関関係について、二つ目の記事では最近の若者の傾向とその背景・理由についての分析が書かれています。

「若者」と書きましたが、原文ではadolescentやteenagersという言葉が使われているので、やや限定的な年齢層を指していることに注意してください。adolescentはOxfordやCambridge、Merriam-Websterなどの辞書では年齢を限定していませんが(「大人への成長過程にある若者」のような表現)、Longmanは、a young person, usually between the ages of 12 and 18, who is developing into an adultと定義に年齢が含まれています。

teenagerの場合は、英語では例外なくbetween thirteen and nineteen years oldと定義されています。つまり年齢にteenが付く年齢で、日本語の「ティーンエージャー」は「十代」の意で使われることが多く、微妙に意味が違います。ですから13歳の誕生日は「I’m a teenager now」と言って喜んだり、20歳になると「I’m not a teenager any more」と寂しがったりします。ただし欧米では「20歳で成人」という統一した観念はなく、16歳や18歳、21歳で成人(coming of age)を祝う習慣です。

youthの定義も辞書や機関によって様々です。国連ではthose persons between the ages of 15 and 24 と定義していますし、先週通訳者として訪問した若者支援をする団体でも「Our definition of youth is under 25」と言っていました。雇用問題で「若者」が話題になるときは、たいていyouthという表現が使われます。

「若者」の説明が長くなりましたが、両記事にて「酒、たばこ、セックス、薬物などに快楽を求める若者の数が減少」という傾向が取り上げられています。ここでの気になる表現は、weed, cannabis, marijuanaです。どれも大麻(マリファナ)を指しますが日常会話ではweed、会議ではcannabisをよく聞きます。大麻は日本では厳しい取り締まりの対象となっていますが、「タバコより健康への害が少ない」という調査結果や病気によっては治療効果もあるとかで国や地域によっては合法化されています。イギリスでもグレーゾーンで、割と身近なところで喫煙者を見かけることがあります。

さて、最近の若者が快楽を求めなくなり(less hedonistic)規則破りも減った(break fewer rules)理由については以下が挙げられています。

1.family life has changed: 親(特に父親)が子供の面倒をみる時間が増えた。

2.more focus on school and academic work: (将来のことも考え、遊びより)学業成績に力を入れている。

3.increasingly ethnically diverse: 西洋諸国ではアフリカ、南アジア、東ヨーロッパなどの国々から移民が増加しているが、移住前の文化ではアルコール、婚前交渉、喫煙などがタブー視されているため、移住後もその文化・習慣を維持している。

4.technology has probably changed people’s behaviour: スマホの影響でネット利用が拡大。SNSでゴシップや悪口も言い合っているからface-to-faceのコミュニケーションが減った。同時に親が子の居場所を追跡したり、頻繁に連絡を取り合うことも若者の行動に影響を与えている。

SNSという表現は日本語で定着しているように思いますが、英語ではSNSもSocial Networking Serviceもめったに使われないので要注意です。ふつうはsocial mediaと言います。(mediaは「メディア」ではなく「ミィーディア」と発音)

米国ではアップル社に対して「子供のスマホ中毒対策を講じるべきだ」と大手機関投資家が要求しましたが、同誌はそれを批判しています。確かにスマホやPC利用量と幸福度に相関関係(correlations)はあるようですが、因果関係(causation)があるとは言えず、朝食抜きや睡眠不足の悪影響のほうがはるかに大きいとのこと。

皆さんは、周囲を見渡して、この記事に同意されますか?

我が家のティーンエージャーは二人とも「信じられない!」という反応でした。愚息も友人たちも皆当然のようにスマホやSNSを使っていますが、リアル(現実世界)も楽しんでいるようです。何事も「ほどほど」が肝心。時間管理をしながら、SNSも楽しめるといいですね。「気が付いたら時間をムダにしていた!」という方にはポモドーロテクニック(第80回参照)がお勧めです。

2018年1月15日

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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