INTERPRETATION

第31回 TPOの大切さ

原不二子

Training Global Communicators

ポジティブ・リスポンス(positive response) について

日本語・英語間の通訳をしていて、つくづく感じるのは、言葉はその時、その場の状況に応じて使い分けをしなければならないということです。英語では、格調の有無はあっても、日本の社会ほど上下関係を気にしないですみます。

英文を邦文にする際は,口で物事を言う時以上に戸惑いを感じることがしばしばあります。

英語は、歯切れがよくてきぱきと、緩急を入れて話しをしないと、相手にしてもらえない,伝わらないように思いますが、日本語では逆に、高圧的に聞こえてしまい、逆効果の時もあるように思います。

最近、「ポジティブ・リスポンス」と言う言葉が使われる場面に遭遇し、この言葉もTPOにより使い方がたくさんあることを強く感じました。単に、ダンスに誘われて「いいわよと言ったわ」、という軽い使い方から、物理的、法的、医学的など多数の使用法があります。肯定的な回答に使われる場合でも、「疑問の余地がなく、明白」と言う使い回しから、「前向きな立場」を意味するものまで運用の幅が広いように思います。

 到達する頂上が見えないことを実感する機会が多いのも、通訳者の妙かもしれません。   

原 不二子

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原不二子

上智大学外国語学部国際関係史研究科博士課程修了。 祖父は「憲政の父」と呼ばれた尾崎行雄、母は「難民を助ける会」会長の相馬雪香。母の薫陶により幼い頃からバイリンガルで育ち、21歳の時MRAスイス大会で同時通訳デビュー。G7サミット、アフガニスタン復興会議、世界水フォーラムなど数多くの国際会議を担当。AIIC(国際会議通訳者協会)認定通訳者で、スイスで開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)、ILO総会の通訳を務め、最近では、名古屋における生物多様性(COP/MOP)会議、APEC女性リーダー会議、アジア太平洋諸国参謀総長会議、ユニバーサル・デザイン(IAUD)会議、野村生涯教育センター国際フォーラム等の通訳を務めている。

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