INTERPRETATION

第384回 片付けから感じたこと

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

先週の本コラムで片付けをひたすらしたことを書きました。こんまりさんの方法に基づき、洋服、書籍、紙類、小物類まで徹底的に要・不要を判断したところです。残すは思い出品の整理。何とか新年度までに済ませたいと考えています。

こんまりメソッドの詳細は書籍に譲りますが、今回私自身、片付けを通じて感じた事や自分なりのヒントなどをまとめてみます。参考にしていただければ幸いです。

(1)集中力が増す
片付けと集中力。一見かけ離れているように見えます。けれども実は密接につながっていると私は感じました。と言いますのも、今回洋服を大幅に処分した結果、手元に残ったのはスカート6点、パンツ1点、トップス7点およびスカーフ・ストール類8点のみとなったのです。ギチギチだったクローゼットはスカスカになりました。それだけでも気分爽快なのですが、点数が減った分、悩まずにコーディネートができるようになったのです。つまり手持ちのものに「集中する」ことで、時間節約にもなり、他のことへ集中できるようになりました。注意力散漫の解消につながったと感じています。

(2)ダイエットにつながる
片付け自体、ちょこまかと動きながら作業をします。よってそれだけでも結構エネルギー消費になるのですね。さらに今回残った洋服はいずれも私のお気に入りばかり。そうなるといい加減な食生活をし続けて、これらの服が着られなくなっては大変です。食生活にも気を付けるようになりました(注:とは言え、先日の旅行で若干体重オーバー。目下ダイエット中です。溜息・・・)

(3)「いつか」思考が減る
手元に残されたものというのは、いずれも厳選されたお気に入りばかりです。それらを大切に使おうというメンタリティになった結果、むやみやたらに「いつか使うかも」「いつか必要になるかも」という思考がなくなりました。つまり、必要以上にモノを買ったり、試供品をもらったりという気持ちが一切なくなったのです。集中すべきは今目の前にあるもの。仕事においても同様で「いつか(=後で)取り組もう」という考えも減ったように思います。とにかく「今」に焦点を当てようと考えるようになりました。

(4)ゆったり話せるようになった
以前の私は早口でガンガン話す系だったと自省しています。常に何かに追い立てられるような気分で毎日を過ごしていたからです。それが仕事でもプライベートでもせっかちさや早口につながっていたのでした。やるべきことをこなしても、どこか自分に焦りがあったのですね。けれども今回の片付けを機に、好きなものだけを身に付けることが実は自己肯定感につながると発見しました。その結果、気持ちの面でもゆったりと構えられるようになり、それが落ち着いた話し方につながってきたように思っています(まだ発展途上ですが)。

(5)潜在的不機嫌要素が減った
以前は引き出しやクローゼットを開けるたびに「ああ、物があふれている」「片付けなければ」という思いを抱いていました。おもむろにそうした感情に見舞われていたわけではないのですが、開けるごとにチラッとそうした思いが頭の中をよぎっていたのですね。つまり潜在的に不機嫌要素をその都度抱いていたということになります。片付け後は引き出しなどを開けるたびに整った状態を目にすることになり、それだけで幸せな気持ちになっています。たとえばアクセサリーの引き出しを開けるごとに「わあ、きれい」と思えるのです。これは気分を大いに上げてくれます。

(6)本当に大事なことは何かを考えるようになった
片付け前の数か月間、私はネイルサロンでジェルネイルをしてもらっていました。美しいデザインを目にすることでハッピーになりたかったからです。けれども片付けを機にネイルはあえてお休みすることにしました。そして、こう考えることにしたのです。ネイルはしているけれど手の動きががさつなのと、ネイル無しでも手の動きがゆったり美しいのとではどちらが良いのか、と。本当に大事なことは何かを片付けが教えてくれたように感じています。

(7)とにかく小サイズから
スッキリした収納場所を一度でも体験してしまうと、必要以上にモノを詰めるのが嫌になります。そこで考えたのが、とにかく小さいサイズのものにしようということでした。たとえお得であっても必要以上に持たない方が気分的に気持ち良いと思うようになったのです。考えてみれば化粧品など、できれば小さな容量で購入した方が直接肌に付けるものですので安心です。割高ではありますが、小さなものを買えば購入頻度は増えます。つまり、別メーカーのアイテムを買う楽しみも増えるのです。

(8)その他:復活させて良かったもの
以前から持っていたものの、箪笥の肥やしのままになっていたものをあえて復活させました。以下はその一部です。
*鍋帽子: 調理後に鍋帽子に入れれば余熱で火が通るというスグレモノ。台所の戸棚奥から復活しました。スープや煮込み料理など、コンロである程度火を通したら鍋帽子へ。数時間たっても適温が保たれています。
*ブロガーズ・トート: 数年前に購入するも、リュックと小バッグばかりの生活をしていたため、使わずにいました。けれども今回、カバンの中身も断捨離した結果、2つ持ちをやめてトート1個に絞ることにしたのです。ブロガーズ・トートは計算し尽くされた形で、使い始めてみてその使い勝手の良さを見直しました。大量に入るのはもちろん、持ち手の長さが絶妙で中の物が取り出しやすいのです。興味のある方は「ブロガーズ・トート」で検索してみてくださいね。
*パールのロングネックレス: ずいぶん前にお祝いにいただいたものの、結婚式などの時ぐらいしか着用していませんでした。けれどもアクセサリーを大幅に減らした結果残った一部がこのネックレス。ネットで調べるとパールのロングネックレスはアレンジも多様にできます。良きものは頻繁に身に付けても飽きが来ません。

(9)新たに購入したもの
*ユニットバス用パンチングゴミ受け: お風呂場の排水溝にセットするゴミ受けです。今まで排水溝パーツ(プラスチック)の水垢などを掃除するのが大変で苦労していました。本品はステンレス製で、髪の毛などのゴミが中央に丸くたまるため、捨てるのも非常に楽です。なぜもっと早く買わなかったのかと悔やまれるほどです。
*透明のティッシュケース: ティッシュというのは不思議なもので、急いでいる時に限って箱の中のラスト一枚ということがよくあります。そこで透明のティッシュケースを新たに購入。今回買ったのはティッシュボックス2個分が入る容量です。なくなりかけたころに補充すれば、慌てずに済みます。
*脱衣所のLEDライト: 数か月前に取り換えた脱衣所のライトが予想よりも暗く、点けるたびに不満でした。我慢できないほどではないものの、潜在的に「暗いなあ」と思い続けるのは良くないと思ったのです。まだ電球は使えるものの、あえてLEDライトを投入。明るくなり、使い勝手が良くなりました。何事も「まだ使えるから」とガマンするのも善し悪しです。

以上、今週は片付け経験から執筆いたしました。少しでもヒントになれば幸いです。

(2019年2月19日)

【今週の一冊】

「ぶらりあるき オランダの博物館」中村浩著、芙蓉書房出版、2008年

1月にオランダへ出かけました。出発前に手に取ったのが今回ご紹介する本。オランダの博物館が取り上げられています。オランダと言えば国立美術館やゴッホ関連のミュージアムが有名です。けれども実はそれ以外にも博物館が沢山あるのですね。

ちなみにアムステルダムの街中を歩いていた際、いたるところで彫刻やアート系のオブジェを見かけました。宿泊したホテルも同様で、階段の壁には音楽関連の絵画が掲げられていたのです。よく見ると価格が付いていますので販売品でした。また、ショッピングセンターにも多くのアートがありましたね。子どもの頃からこうしたものを目にしているオランダ人は、アート感覚が研ぎ澄まされているのでしょう。だからこそ、街の建築物も統制がとれており、国全体が博物館のような印象を受けたのでした。

本書にはユニークなミュージアムがたくさん出ています。たとえばアムスであればハウスボート・ミュージアムや猫の博物館、熱帯博物館や鉱物学博物館などもあります。さらにスキポール空港には国立美術館の分館まであるとのこと。オランダと言えばハイネケン・ビールも有名で、こちらも体験型のミュージアムが有名です。

アムステルダム以外にはハーグの監獄博物館、ロッテルダムのキューブハウスやユトレヒトのアボリジニ美術館なども魅力的です。本書をめくるだけでも旅気分は十分味わえますので、アート好きの方、旅行に出かけたい方などにぜひお勧めしたい一冊です。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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