INTERPRETATION

第537回 心に響いたことば

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

ついこの間2022年が開けたかと思いきや、このコラムがアップする4月26日は今年に入ってから116日目。年末まであと249日しかありません。GW突入のころには、今年の3分の1が終わっていることになります。

さて、大型連休というのは、慌ただしい新年度から一息つける時期ですよね。でも、ちょうど疲れが出やすい頃でもあります。緊張感が緩み、長期の休みで今度は仕事や学業にカムバックするのがしんどくなるかも。

ということで、今回の本コラムでは、最近私が巡り合ったステキなことばをご紹介いたします。みなさまにとって、心のサプリになればうれしいです。

1 「幸せとは自分の運命を受け容れることから始まる」
すえもりブックス代表の末盛千枝子さんの文章です。末盛さんはお子さんたちがまだ小さい頃にご主人を病気で突然亡くされました。さらにご長男は成人になった後、スポーツの事故で車いす生活を余儀なくされています。それでもすべての出来事を受け止め、自分の運命を肯定しておられる末盛さんです。

2 「一年先は、わからない。でも小さな光で道を照らしていけば、必ず前へ進んでいける」
新年度に購入した日本能率協会のNOLTY手帳。その中に挟まれていた小さなしおりに書かれていました。確かに、この手帳を使い切るまでの間、自分の命が絶対的に保障されているわけではありません。先が見えないからこそ、光を灯しながら歩む大切さをこの文章から感じました。

3 「社会が不幸であることと、個人の不幸は本来は別。最後に救ってくれるのは、その人の楽しみや希望である」
絵本作家ヨシタケシンスケさんのことばです。40歳でデビューという遅咲きのヨシタケさんは、かつて会社員のころ、ストレスを感じた際に絵を描いていたのだそうです。最近は特に心がざわついてしまう報道が多いですが、そうした中でもいかに自らが楽しみや希望を抱くのが大切かを語っています。

いかがでしたか?最近私の心に響いたフレーズを3つご紹介いたしました。ちなみに末盛さんは読書中に素敵なことばに出会うと、それを小さな紙に書きだし、箱にしまうのだそうです。そして時折、箱を開けてその紙切れを読み直すとのこと。以前私は海外の通販サイトでquote cardsという商品を見たことがあります。これは箱の中に様々な名言が記されたカードが入っており、箱を開けて好きなカードを取り出して読む、というものです。美しいデザインの市販のquote card boxも魅力的ですが、自分で作ることもできますよね。日々私たちが出会うことばを書いて、スイーツのおしゃれな箱や缶に入れるのも一案です。

私自身、これからも自分を支えてくれる文章を日本語・英語で探していきたいと思います。

(2022年4月26日)

【今週の一冊】

「近代別荘建築」十代田朗監修、トゥーヴァージンズ、2022年

看板や復興建築など、興味深い切り口で建造物を紹介する「味なたてもの探訪」シリーズ。最新刊の本書が注目しているのは日本の別荘建築です。今でこそ軽井沢や那須などは別荘地として知られていますが、なぜあの場所がそもそも別荘エリアになったのかには歴史的な背景があります。

明治初期のこと。当時日本に暮らしていた外国人は、自らが土地や建物を持つことを許されていませんでした。よって、日本人名義を借りて別荘を持つようになったのが発端です。それが外国人社会の間で口コミとなって広がり、軽井沢や箱根、日光などに別荘が建てられるようになったのでした。そういわれてみると、日本離れしている美しい別荘建築が今なお残されているのもうなずけます。

一方、「別荘」自体は近世より前の時代にも存在していました。たとえば平等院は貴族や皇族などによって使い継がれ、京都の銀閣寺も元々は足利義政の山荘でした。

本書には別荘の楽しみ方も紹介されています。建物はもちろんのこと、内装、たとえば窓やガラス、天井なども注目してみると美しい意匠であることがわかります。別荘や近代建築に理解を深めるのに格好の一冊です。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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