INTERPRETATION

第538回 工夫が楽しい

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

長男が生まれたのはロンドンのBBCで働いていた頃。外国での出産育児には不安もあったのですが、いざ蓋を開けてみれば良い意味でのイギリスのアバウトさに救われました。現地では原則として出産翌日に退院。そのあとは保健師が往診に来ます。その際、言われたのが「台所にあるオリーブオイルを塗るとおむつかぶれ対策になる」とのアドバイス。食用オリーブ油を新生児に塗るなど私にはびっくりでしたが、その一方で学んだのが「身の回りのもので工夫する」という考え方。以来、「まずは身近なものでやりくり」が私にとって楽しいやりがいになっています。

そこで今週は、日常生活の中で私が工夫している「なんちゃってライフハック」をご紹介します。GW中に片付けやスッキリライフを目指す方のお役に立てれば幸いです。

1 床にモノを置かない
掃除機がけの際、床の上のごみ箱、体重計、バスケット、椅子などなどを動かすのが煩雑だなあと思っていました。そこで「椅子以外はすべて浮かす!」と思い立ちました。椅子や家具はさすがに浮かすのは超能力でもない限り無理ですが(笑)、それ以外は以下の2と3のような感じで置き直してみました。

2 バスルームの床にあったあれこれ
まず、体重計は洗濯機と洗面台の数センチの隙間へ。一方、平置き長方形バスケットに入れていたタオルは、タテ型ファイルボックスへ入れ替えて、洗濯機の右側スペースに置きました。洗濯機の周りには洗濯機パンがあるので、その上に載せて安定させました。

3 ゴミ箱
書斎のゴミ箱はスチールデスクの天板下にある柱にマグネットを付けて、そこに紙袋をひっかけました。これがゴミ箱となり、いっぱいになったら袋ごと捨てます。一方、リビングのゴミ箱はダイニングチェアの背もたれ(「笠木(かさぎ)」と言うそうです)にS字フックを付けてそこに紙袋を。脱衣所のタオルハンガーにもS字フックをかけて紙袋です。「ゴミ箱=床」ではなく、むしろ「自分の手を伸ばした高さにある」方が、私にとっては使い勝手が良いようです。

4 使い終わった缶や瓶の再利用
先日、パウンドケーキを作ろうと思うも型が無いことに気づき、たまたまあったおしゃれなクッキーの空き缶で焼いてみました。同じアルミですのでオーブン高温も問題なし。柄がおしゃれで蓋も付いていますので、一石二鳥でした。一方、細長いジャムの空き瓶はドレッシング作りに重宝。材料を混ぜて蓋をして振り、余ったらそのまま冷蔵庫へ。使う前は念のため煮沸消毒するのがオススメです。

5 洗面ボウルをフル活用
もともとあまり使っていなかったプラスチックの洗面器。引っ越し時に手放したものの、先日、おしゃれ着を家で洗おうと思い、困ってしまいました。でも考えてみれば洗面台の洗面ボウルを使えば良いのですよね。洗面器よりもサイズが大きく、使用後は洗面器のように乾かす必要もありません。しかもうれしかったのは、おしゃれ着を洗い終えたら(何となくではありますが)、洗面ボウルも排水溝もきれいになっていたことでした!

6 アロマのある生活
アロマポット用にオイルを買うも、余りがちに。アロマストーンも引っ越しで断捨離。そこで思いついたのがお手洗いでの活用。某高級アイスクリームの蓋(えんじ色の、アレです!)の上にトイレットペーパーを小さく折り畳んで載せます。そこにアロマオイルを数滴。これだけでトイレ内が良い香りになりました。香りが飛んだらトイレットペーパーはそのまま流せばOKです。靴箱にも同様に使えます。

7 ティーポットが無くても
ティーバッグに慣れてしまい、リーフティーを淹れるのが何となく億劫になっていました。我が家にはティーポットが無いので、茶葉をジャンピングさせるグッズもありません。でも電動コーヒーメーカーのコーヒーポットがある!これで十分です。一杯だけなら注ぎ口付きのミルクピッチャーでもジャンピングできました!

8 取っ手の外れる深フライパン
少し深めのフライパンで取っ手の外れるタイプを愛用しています。実はこの汎用性が素晴らしく、今はこれで何でも作っています。炒め物はもちろんですが、スープも茹で物もOK。取っ手を外せば野菜のオーブンローストやちぎりパンなども焼けます。

9 調味料も工夫次第
たとえばコーンスターチが無くても小麦粉で何とかなりますし、エスニック調味料も家にある基本的な調味料で代用できます。甜面醤、豆板醤、オイスターソース、ポン酢、焼き肉のたれなど、ネットで調べれば作り方が出てきます。

10 部屋のイメージチェンジに
ソファやベッドのイメージチェンジ。余った大判スカーフを広げてみたところ、新鮮な雰囲気になりました。クローゼットで死蔵していたスカーフがよみがえりました。

いかがでしたか?今回はランダムではありますが、私なりに工夫して「面白い!」と思えた10個を書いてみました。ヒントになればうれしいです。

(2022年5月3日)

【今週の一冊】

「世界のアーティスト250人の部屋 人生と芸術が出会う場所」サム・ルーベル著、ヤナガワ智予訳、青幻舎、2021年

300ページを超える大著ですが、頁をめくれば世界各地のアーティストがどのような部屋で暮らしていたかがわかる一冊です。モノだらけなのに雑然さが感じられない部屋もあれば、ほとんど何も置かれていない空間も。巻末には見学可能な家のリストを始め、索引も充実しています。

イギリスの小説家ヴァージニア・ウルフの部屋は書籍がたくさん並ぶ本棚に、深緑のストーブが印象的。別室の壁も緑であることから、ウルフのお気に入りの色であったことが想像できます。一方、啓蒙主義を唱えたフランスのヴォルテール。壁紙もベッドカバーも金ぴかです。チャイコフスキーのグランドピアノ前に置かれているのは専用スツールではなく、普通の椅子。高さ調節は大丈夫かしらと思ってしまいます。

あえて分類するならば、建築家の部屋はいたってシンプル、小説家の場合、本が所狭しと並びます。ファッションデザイナーは多色好みで不思議なオブジェも。ただ、どの部屋でも共通して言えるのが、「使う本人にとって一番居心地よい空間になっている」ということ。本書をヒントに我が家もおしゃれにしたいなと思います。

Written by

記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

END