INTERPRETATION

Vol.49 「今やれることは何でもやろう」

ハイキャリア編集部

通訳者インタビュー

【プロフィール】

野本あけみさん

Akemi Nomoto

国際基督教大学(ICU)高校、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。

外資系銀行で9年就業した後に、ご主人の転勤で海外(フランス、カナダ)へ。

カナダでは日系企業のアテンド通訳を経験。

帰国後、本格的に通訳の勉強を開始し、監査、自動車関連企業にて3年間のインハウス通翻訳業務の経験を積んだのち、現在はフリーランス通訳者としてご活躍中。

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Q.語学にご興味を持たれたきっかけは?

英語は子供のころから好きでした。そもそも本が好きで、親が日本語、英語にこだわらず沢山本を与えてくれて、買ってもらった英語の本はボロボロになるまで離さなかったようですから、親もきっとそれが面白くて色々与えてくれたのでしょうね。

Q.上達もスムーズだったのでしょうか?

とにかく英語が好きだったので、中学校の時のスピーチコンテストでは賞ももらいました。でも、その後入学した高校では、帰国子女などネイティブ並みの英語力の人に囲まれて、読む、書く、聞く、話す、すべてにおいて圧倒的な差を感じ、いきなり奈落の底へ落とされた気分になりました。得意だと思っていた英語が、実は全くできないと、その時始めて気がついてしまい、おとなしい目立たない3年間を過ごしました。一生英語にはかかわらないだろうというくらいまで落ち込みました。大学も英語とは関係ないところを選びました。

Q.英語が苦手になられたにもかかわらず、通訳者を目指されるまでにはどんな気持ちの変化があったのでしょうか?

卒業後は、ほとんど英語を使わない仕事に就いたのですが、結婚して主人の仕事の関係で、フランスとカナダで生活しました。そのとき、時間ができたので昔、好きだったにも関わらず苦手になった語学のリベンジをしたいと思いたちました。フランスではフランス語を学びましたし、特にバンクーバーでは、日系人のコミュニティの間を行き来しているうちに、日系企業の方のアテンドなど、私の英語力でもお役にたてることがありました。色々な方々にお目にかかる過程で、もともと引っ込み思案だった自分の中で何かが変わりました。人に会う、話すことがとても楽しいことだと気がつきました。そして、帰国後は真っ先に通訳学校に通うことになりました。

Q.通訳学校にはいって感じられたことは?

ボランティアでは、自分が通訳をすればそれなりに感謝されていたはずなのに、

学校に一歩足を踏み入れた途端、今までしてきたことは、全く通訳ではなかったと気がつかされました。

一日の勉強時間は10時間ほどです。トレーニングは毎日手を変え品を替え、新聞を読んだり、サイトラをしたり、シャドーイングをしたり、何かしらしていました。

Q.途中落ち込むことはありませんでしたか?

毎回です(笑)自分には向いていないと思うことなどしょっちゅうです。

でも苦労を共にする仲間がいましたし、泣きながら、「今やらなければいつやる!」と思って頑張りました。クラスでは、講師にほめてもらえるなど夢のようですから、自分なりの小さな喜びといいますか、使えなかった単語や表現が使えたなど、小さなことで喜んでいました。私の場合、下のレベルのクラスにいる頃から軽いお仕事を紹介してもらうことで外に出て、それが大きな励みになりました。

Q.通訳をしていて難しいと感じるのはどんなときですか?

専門用語などはやはり難しいです。その場で初めて聞く言葉で、文脈から判断がどうしてもできない場合、進行を止めても大丈夫な場合に限って、確認をさせていただくこともあります。

どんなに資料を読み込んで準備万端と思っていても、一回で満足いくことなどありません。限られた準備時間、精一杯やってこれ以上はできなかったら、あとはどんと構えて、現場では何事もないように臨むしかないと思っています。

おろおろしているのをお客様に悟られてはいけないし。だから必死で臨むことになります。(笑)

Q.気分転換の方法などはありますか?

色々な現場に行くこと自体気分転換です!

そもそも通訳を目指し始めたのが30代後半と遅めなので、いつも通訳者としての寿命が短いことを意識しています(笑)変な話ですが、いつか通訳ができなくなる日が来るだろうと思っています。期限があるからこそ、「今やれることはなんでもやろう!」と自分に言い聞かせて日々突っ走っています。とはいえ、毎回違う現場へ行くのですから、その都度リセットしてニュートラルな気持ちに自分を戻さないといけない、とも思います。気持ちの上でも体の上でも自己管理をちゃんとしないと。

「あのくたびれた通訳者はなんだ」なんて言われてしまうのは避けたいです。(笑)

毎回、新鮮な気持ちで現場入りして、「お客様に会うために参りました!」っていう気持ちをいつでも持っていたいと思っています。

Q.通訳のやりがいは?

やはり、終了後に「ありがとう、良かった」、と言われた時が一番嬉しいですね。

お仕事が無事に終わった時はいつでも、事前に万端整えて下さったコーディネーターさんや、受け入れて下さった客先に心から感謝します。今の私があるのは、そういう方々がいてくださったお陰です。

また来てほしいと言われて、本当にまた現場でお会いできたときには「わ~、またお会いできましたね!」と心底うれしくなります。

Q.今後の目標など目標などがあったら教えてください。

通訳者としては、一歩でも先輩方に近づけるように常に努力を続けなければと思っています。

少しでも正確に訳せるように、また、わかりやすかったと言っていただけるように、日々の地道な勉強やトレーニングは必須です。とにかく「正確に、誠実に」です。

Q.通訳者を目指されている方へのアドバイスをお願いします。

学校で訓練を積みながら、その時々の実力でも出来るお仕事を紹介していただくのが一番です。いただいたお仕事を確実にこなして信用を築いてください。

もしお話をいただいてちょっと怖いけれどどうだろうなどと迷っている時は、ある程度背中を押してくださる方にご相談するのがいいと思います。

学校での訓練は絶対必要です。厳しい講師とよく出来るクラスメートの中で大変ですが、落ち込む暇などありません。そんな暇があったら少しでも訳出ができるように努力すべきです。聞いた話ですが、年を取ったり出来の悪い競走馬を訓練するときは、若い良く走る馬の中に入れて走らせることがあるそうです。周回遅れになることもありますが、最後尾がどこか判然としない中で、駄馬は気がつかず走る。とにかく周りについていこうとするうちに、いつの間にか同じように走れちゃった、ということが起こるそうです。

学校にいる間、駄馬の私は、つらいけど抜け出せない、遅くても走らなければ、といつも思っていました。まずは自分をその場に置くこと。学校もお仕事もその場に自分を置くことです。

編集後記:

お客様に対しても、一緒にお仕事をする通訳者の方や私たちコーディネーターに対しても、いつも一期一会で接してくださる野本様。自然と「是非またお会いしたい」と思わせる魅力が溢れてらっしゃいます。

最初は苦手意識のあった英語だからこそ、地道な努力を重ね、正面から誠実に向き合って、通訳者としてご活躍されている姿に、勇気を沢山もらいました!貴重なお時間をいただきありがとうございました。

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記事を書いた人

ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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