INTERPRETATION

第44回 Brexit Update! イギリス、新たな時代の幕開け

グリーン裕美

国際舞台で役立つ知識・表現を学ぼう!

1月31日にイギリスはEUを離脱しました。EU本部のあるブリュッセル時間で2月1日午前0時、イギリス時間では1月31日の午後11時をもって正式に離脱。その1時間前にジョンソン首相はFacebookのビデオメッセージで国民に向けて「dawn of a new era(新たな時代の夜明け)」であり、「whatever the bumps in the road ahead I know that we will succeed. Now is the time to use those tools to unleash the full potential of this brilliant country and to make better the lives of everyone in every corner of our United Kingdom(この先の道がどんなに険しくても、必ず成功する。この輝かしい国の潜在的な力を今こそ解き放ち、イギリス各地の皆の暮らしを改善させよう)」と語りました。

では、2月1日から何が変わるのでしょうか?

1.イギリスで暮らす私にも何か大きな影響があるのではないかと心配してくださる方もいらっしゃるので(thank you!)、まずは日本国籍とイギリスの永住権(Indefinite Leave to Remain, ILR)を持ちイギリスに暮らす者について申し上げると……何も変わりません。もともと日本のパスポートではEU域内を自由に移動することはできず、Brexit後もそれは変わりません。昨年から、日本のパスポート保持者はイギリスに入国する際に自動化ゲートを使えるようになりとても便利なのですが、これはEUとは関係なくイギリス政府の決断ですので、今後も自動化ゲートを利用できます(もうヒースロー空港の入管で並ばなくていいんですよ!)。またイギリスの永住権(ILR)はイギリスのみに適用されるものであり、今後も同様です。

2.イギリスで暮らす350万人の欧州市民(EUおよびEEA加盟国の国籍保持者)にとっては、多少事情が異なります。2020年末までは移行期間(transition period)のため、今まで通り自由にEU域内を移動できますが、2021年以降も居住を希望する場合はEU Settlement SchemeというEU/EEA国籍者とその家族のための特別枠に申請をする必要があります。2020年12月31日時点でイギリスに5年以上居住している人には永住資格(settled status)が認められます。5年に満たない人には準永住資格(pre-settled status)が与えられ、5年間の居住が認められます。またイギリス国籍取得の基準を満たしている場合は帰化(naturalisation)を選ぶ人もいます。親しい日本人仲間の中にはEU加盟国出身の方と結婚して家庭を築いている人も少なくありません。例えば、オランダ人と結婚している友人の子供はオランダ国籍と日本国籍を保持していましたが、Brexitに備えてイギリス国籍を取得させるとのことです。

3.1988年以降イギリスのパスポートは、ワインレッド(burgundy)で表紙にEUROPEAN UNIONと記載されていました。EU離脱派は、このことを大変嫌っていて離脱キャンペーン中は「We want our blue passport back! (イギリスの青いパスポートを再び!)」と呼びかけていました。この要望を受け、パスポートのデザインを青に戻すという政府の発表は2年以上も前(2017年12月)に行われました(関連記事)。今後、段階的に青いパスポートが導入されます(関連情報)。

4.では、EU域内に暮らす130万人のイギリス人はどうなるのでしょうか。こちらも移行期間中はこれまで通り暮らすことができますが、2021年以降に関してはそれぞれの居住国で申請をする必要があります。そして在住が認められた国でのみ暮らすことができます。つまり、これまではEU圏内で自由に引っ越しができましたが、今後はポーランドで居住権を獲得すれば、居住できるのはポーランドのみということになります。居住権以外に、年金や自動車運転免許証など色々と影響はあるようです。

5.2月1日以降のもっとも大きな変化は、欧州議会(European Parliament)でナイジェル・ファラージをはじめとするイギリス代表の議員(MEP; members of European Parliament)の姿が消えたことでしょう。移行期間が終了するまでは欧州単一市場(the European single market)に残り、EUへの分担金も支払いますが、首脳が集まる欧州理事会(the European Council)や閣僚が集まる欧州連合理事会(the Council of the European Union)、欧州議会(European Parliament)にイギリスの代表者がいなくなります。またEU機関に掲げられていたユニオンジャックは降ろされ、博物館に展示されるそうです。EU機関で勤務するイギリス人職員に関しては、それぞれのポジションによって職を失った人、今年中は限定的に勤務する人、今後も継続して勤務できる人に分かれるようです。

6.EUを正式に離脱したので、EUとの貿易交渉(trade talks)がやっと開始されます。これが今年末までにうまく成立するかどうかについては、疑問視する声が多く上がっています。カナダとの貿易協定(CETA)に近いものになるのではないかという予測もあります。イギリスがどの程度EUの規制に従うのかによってアメリカとの貿易交渉にも影響が出るので、今後の展開に注目です。

以上、本当にこの日が来てしまい寂しくはあります。ヨーロッパからのメッセージは「Au revoir but not good-bye(さようならじゃなくって、また会う日まで)」。今後イギリスがヨーロッパと新しい関係を築きながらもGlobal Britainとして発展することを期待しています。

2020年2月3日

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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