INTERPRETATION

バブル

木内 裕也

オリンピック通訳

コロナウイルス前は「バブル」と言えば約30年前のバブル経済を思い起こしました。しかし最近ではSocial BubbleやTravel Bubbleなどという表現が聞かれます。スポーツの世界でもここ数ヶ月はよく使われています。

春から初夏にかけては、あらゆるスポーツイベントが中止になりました。7月下旬からのオリンピックもそうですが、プロ野球やJリーグなどの国内トップリーグに加え、世界大会も中止になりましたし、高校野球も同じ。しかし一部では試合の再開も模索され始めました。

そんな時にキーワードとなったのが「バブル」。Quarantineは一般的な「隔離」という意味で使われますが、チームや大会関係者を1箇所に集めて、外出を禁止にする隔離生活を、バブルと呼んでいます。つまり、シャボン玉のような特定の空間の中で一定期間の生活をすること。

選手たちは自宅からバブルのある場所に向かい、そこでウイルスのチェックをします。陰性の場合、そこから2週間、外部からは一切遮断された生活を過ごします。2週間後でも陰性の場合は、そこからチームとしての活動を開始。つまり、その2週間の間に新たに感染する可能性を排除し、チーム全員の陰性を確証するというもの。これは大会関係者やメディアなどにも同じように行われました。

ディズニーなどの大きな娯楽施設にはホテルもありますから、そのような施設にサッカーやバスケットボールの関係者が一同に介します。最初の2週間に加えて大会は数週間続きますから、2ヶ月近い遠征になることも。その間、家族と会うことはもちろん出来ませんし、週に1度、特定のレストランなどに行かせてもらえることがあるかどうかで、あとはリゾート内での生活です。3食同じ会議室で食事をするだけでも大変です。誕生日ケーキのロウソクも、紙皿をうちわのように使って火を消した、とのこと。

移動はすべてIDで監視され、メディアなどは他人からある特定の距離よりも近い距離に近づいて、一定時間以上を過ごすと音がなるアラームも着けさせられます。Social distanceのためではありますが、移動中のバスなどでは音が鳴りっぱなしで大変だった、と聞きました。

とは言え、食事を作るスタッフや清掃のスタッフなどは、個人の自宅との行き来をしていますから、感染をゼロにすることは容易ではありません。選手の行動を自己責任やチーム責任にした野球などでは、20歳になるかならないかの若い選手がこっそり外出していた、などという問題も発生しました。

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木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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