TRANSLATION

第86回 決算短信②

土川裕子

金融翻訳ポイント講座

こんにちは。今月も、東証プライム上場企業に公表が義務づけられている決算短信からキーワードを拾って行きたいと思います。前回見たタイトルの下、メインの内容の前に、会社名や代表者、提出予定日等々の情報があるのですが、ここは特に問題ないと思われますので、興味のある方はそれぞれ参照しておいてくださいね。

※今回使用する資料については本稿末尾に掲載しています。

さて、今回から3回に分けて、「1.**年*月期の連結業績」(1.Consolidated financial results for the fiscal year ended MM DD, YYYY (from MM DD, YYYY to MM DD, YYYY)の
 (1)連結経営成績(Consolidated operating results)
 (2)連結財政状態(Consolidated financial position)
 (3)連結キャッシュ・フローの状況(Consolidated cash flows)
を見ていきます(連結=Consolidatedはこれ以降省略)。

実はこの部分、企業の決算書類の中でも特に重視される「財務三表」、すなわち
 損益計算書(P/L:Profit and Loss Statement)
 貸借対照表(Balance Sheet)
 キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)
の3つにそれぞれ対応しています。

今回は、損益計算書(P/L)に対応している(1)経営成績(operating results)の部分を見ましょう。

損益計算書とは、その会社の「一定期間」の業績、つまりどれだけのモノやサービスを売り、どれだけ利益を上げたか、を示す書類です。Income Statementと呼ばれることもあります。収入があって、何やかや使った後にどれだけ残ったかを示すという点で、子どものお小遣い帳と変わりません(笑)。

ただ売上や利益には幾つか種類があって、どの会計基準に照らすかで微妙に内容が違ったりするので、特に英語から日本語に訳す際には注意が必要です。しかし今回は日本の書類を訳すわけなので、そこは明解。この部分の主な用語を参考資料からピックアップしますと、
 売上高:Net sales
 営業利益:Operating profit
 経常利益:Ordinary profit
 1株当たり当期純利益:Basic earnings per share
 売上高営業利益率:Ratio of operating profit to net sales
などがあります。

「売上高」なんだからsalesだけでいいんじゃないの、と言いたくなりますが、実は米国会計基準などでは「総売上高(gross sales)」と「純売上高(net sales)」を区別しており、日本の売上高は後者に当たるため、このようにしているそうです。この2語の違いについて、興味のある方はぜひ調査してみてください。

次に営業利益(Operating profit)と経常利益(Ordinary profit)。営業利益は、売上から
 売上原価:cost of goods sold
 販売費および一般管理費(販管費):SG&A(selling, general and administrative expenses)
の2つを差し引いたもので、経常利益は、そこからさらに
 営業外費用:non-operating expense
を差し引きます。

売上高営業利益率(Ratio of operating profit to net sales)は、売上に占める営業利益の割合を言い、その会社が効率的な稼ぎ方をしているかを示す指標です。少し売るだけでたくさん利益を上げているか、たくさん売っても利益が上がらないか、ということですね。

「売上原価」は仕入れコストや製造原価、「販管費」は賃金や地代など販売に必要な費用、「営業外費用」は本業以外で発生する費用(支払い利息など)ですが、これもできれば一度きちんと調べて、自分なりに整理しておくことをお勧めします。

さて、これ以外に会社が支払うべき費用や税金は様々ありまして、それらをすべて差し引いて残った最後の利益が「当期純利益」であり、それを発行済株式数で割ったものが「1株当たり当期純利益(Basic earnings per share)」となります。

※「当期純利益」の訳としてはcurrent net incomeとかnet profit for the yearなどが辞書には載っていますが、実際のところ外国企業のP/Lではprofit for the yearとのみなっているケースが多いように思います。

これだけで十分おなかいっぱいな感じになってしまいますね。しかしまだまだ先は続きます。がんばりましょう。次回は貸借対照表(Balance Sheet)を見て行きます。

 

※今回は、日本取引所グループのサイトにアップされている以下の書類を使用しました。

英文開示様式例(通期第1号参考様式【日本基準】(連結))https://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/disclosure-gate/form/nlsgeu000005c13g-att/nlsgeu000005c17h.doc
※すぐにダウンロードが始まります。

決算短信・四半期決算短信作成要領等(日本語)https://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/format/summary/tvdivq0000004wuh-att/tvdivq000000up10.pdf
(このうちP.20の「通期第1号参考様式〔日本基準〕(連結)」

Written by

記事を書いた人

土川裕子

愛知県立大学外国語学部スペイン学科卒。地方企業にて英語・西語の自動車関連マニュアル制作業務に携わった後、フリーランス翻訳者として独立。証券アナリストの資格を取得し、現在は金融分野の翻訳を専門に手掛ける。本業での質の高い訳文もさることながら、独特のアース節の効いた翻訳ブログやメルマガも好評を博する。制作に7年を要した『スペイン語経済ビジネス用語辞典』の執筆者を務めるという偉業の持ち主。

END