TRANSLATION

第164回 出版翻訳家デビューサポート企画レポート⑧

寺田 真理子

あなたを出版翻訳家にする7つの魔法

知人の編集者さんに連絡をとってみたIさん。すると、ちゃんとお返事をいただくことができました。残念ながらお断りのお返事でしたが、こうして行動してみて、相手からリアクションをもらう経験は、とても大切だと思います。それを積み重ねると、「どうせ返事なんてあるはずがない」というマインドから「当然返事があるはず」というマインドに変わってくるので、実際にお返事をいただけることも増えてくるからです。

お断りの理由としては、評伝というジャンルは売るのが難しいとのこと。でも、これはあくまでも「A社にとっては」という話に過ぎないんですよね。評伝を好んで扱っている出版社や、ぜひ売りたいと考えている出版社だって当然あるでしょうから、そこを見つければいいわけです。要はマッチングなんですね。

というわけで、気を取り直して早速次に。他に挙げていた候補の中から、B社がいいのではと思いました。というのも、Iさんの企画書や試訳を拝読しながら、「この内容は、あの方がお好きなんじゃないかな」とB社にいる知人の編集者さん(Bさんとしますね)のことが思い浮かんだのです。Iさんの選んだ原書は、誰でも気軽に読めるものではなく、読み手を選ぶ本です。読むほうにも求められる水準が高いのですが、読書家には好まれるはず。その点、ベテラン編集者Bさんの興味をかきたててくれるのではと感じました。

IさんにB社を打診してみると、ちょうどB社から出ている類書を読み終えたところで、前向きな姿勢を見せてくれました。類書の主人公はIさんの原書の主人公とは性格的には真逆なものの、逆境をはね返して不可能を可能に変えていった、お手本にしたい人物として共通点があるそうです。

そこで、知人ということもあり、私からBさんに打診してみました。企画書をお送りしていいかお尋ねしたのですが、Bさんは日頃からとてもお忙しい方で、しばらくメールへのご返信がなく……少し待ってからリマインドさせていただきました。すると、よいお返事ができるかどうかわからないけれど、送ってみてくださいとのこと。すぐにIさんからお預かりした企画書と関連資料一式(フィードバックを受けてIさんが修正したものです)をお送りしました。

その後、まだご連絡を待っているところです。そろそろまたリマインドしてみてもいいかなと思うのですが、難しいのはタイミングです。今は年度末なので、年度内に仕上げなければいけない案件を抱えている方も多く、何かと気忙しいものです。そこで催促すると裏目に出てしまうこともあるかもしれません。それよりはむしろ、新年度に切り替わり、「何か新しいことをやろう」という気分のときにリマインドしたほうが、話が動きやすいように思います。人間は理屈よりも気分で動くいきものなので、新年度や連休明けといったタイミングで、何かを始めたくなるものです。そういうサイクルに企画を合わせていったほうが、うまく流れに乗ることができるでしょう。

そんなわけで、少し「待ち」の状況に入ったところですので、また動き出したところでIさんの進展をレポートしますね。

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Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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