INTERPRETATION

第90回 米Uberのビジネスモデルは成功するのか?!

グリーン裕美

ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。先週末(金曜から月曜まで)はイギリスなどキリスト教文化の国ではイースター(イエス・キリストが十字架にかけられて殺されてから3日目に復活したこと)を祝う休日でした。信心深い人は教会に行きますが、大半のイギリス人にとってはウサギ(多産の象徴)やタマゴ(生命の始まりを象徴)の形をした巨大なチョコレートのプレゼントを楽しみにする日です。

では、先週気になった「米ウーバー財務情報を開示」というニュースを紹介します。

ウーバー社については本コラム第45回でも紹介しましたが、世界中で広がっている配車サービス運営会社です。イギリスでも十代の若者から大人まで日常的に利用されるようになりました。最近よく話題になるsharing economyやgig economyというとほぼ必ず例として挙げられるのがUberとAirbnbです。「そんなに流行っているサービスならきっとその会社は大儲けしているのだろう」と思われがちですが、実はこれまでまったく利益を出していません!

では、4月14日付Bloomberg Technologyの記事にある表現を一部抜粋します。

まず見出し。Sales growth outpaces lossesとあります。

outpaceは「~を上回る/追い越す/しのぐ」。sales growth(売上の成長率、増収率)がlosses(損失の増加率/伸び)を上回っている、ということがニュースとなっています。つまり、相変わらず巨額の損失を出しているものの売上高(配車の予約数)が増えているから先行きは明るい、というわけです。

具体的な数字はこちらです。

The company generated $2.9 billion in revenue, a 74% increase from the third quarter. Losses rose 6.1 percent over the same period to $991 million.

(売上高は29億ドルと、前四半期から74%の増加をしたが、損失(赤字)は6.1%増の9億9100万ドルだった)

つまり、売上の伸びが74%という急成長を実現しているのに比べると損失はほんの6.1%しか増えていないから、長期的には事業の先行きに自信がある、とのことです。

・the privately held company:非上場会社

ウーバーは、非上場会社なので財務情報の公開は義務付けられていません。それでも公開した理由は、最近不祥事(セクハラ、幹部の離反など)が相次いだので事業の拡大ぶりをアピールしたいという狙いがあったのではと考えられます。

・the ride-hailing giant:配車サービス会社大手 

(ライドシェアや相乗りサービスなどとも)

これまでのところウーバーが圧倒的な地位にありますが、ライバルの米リフトには米ゼネラル・モーターズ(GM)が出資、米アップル社は中国の配車アプリ最大手滴滴出行に出資、日産は仏ルノーと無人運転の配車サービスを共同開発など、今後も注目の業界です。また日本でも規制が緩和されて一般ドライバーが客を有料で同乗させることができるようになるのかも気になるところです。

・Uber is a one-of-a-kind company, in good ways and bad ways.

ニューヨーク大学のDamodaran教授の言葉です。

one-of-a-kind(比類のない、ユニークな、独特な)とか、in good ways and bad ways (良くも悪くも、良い意味でも悪い意味でも)という慣用表現が使えるとネイティブっぽく聞こえるかもしれません。ぜひ使ってみてください。

長期的な視野に立って、巨額の投資を行い、ほとんど利益を出さない企業としてはアマゾン社が有名です。アマゾン社も当初は巨額の損失を出していましたが、その額においてウーバーはかなり上回っています。

ウーバーの配車サービスは、もともとはシリコンバレーの通勤ラッシュ時の交通渋滞緩和のためのアイデアとして生まれたサービスらしいですが、無人運転への流れとともに、ウーバーがいつ利益を出すようになるのか(ならないのか)今後もニュースを追っていきたいと思います。

2017年4月17日

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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