INTERPRETATION

第17回 「言葉」の重み

原不二子

Training Global Communicators

「言葉」の重みを改めて思う出来事がありました。

異文化に暮らす人々が協力し合いながら幸せに生きられるよう、相互理解を深める各種の試みがなされていますが、その任を担う方々の思いを夫々の言葉に置き換えて伝えるコミュニケーターとしての私たち通訳者の責任は言うまでもなく重いのです。通訳ブースという密室の中では、軽い気持ちで冗談や私情を交わすことがあっても、常に、マイクがオンであっても恥ずかしくない言動をしなければと思いました。

グローバル化が進む世の中では、課題もますます膨大に、かつ複雑になっています。そのため、各国政府間の協力だけでは事が進まないと、政界・財界・学界の三者が協力して課題にあたろうという試みが久しく行われています。日本では、「政・産・学」間の協力と言うように、まず「政府」を先にもってきますが、アメリカなどでは、「産・学・政」の順序です。「民」優先のビジネスを筆頭に、アカデミック(大学関係)、最後にガバメントの順となります。「民」が主体である国とまだ政府が主導である国の違いを感じます。

今回の災害が、日本を「民」主導に切り替える機会になるでしょうか。

原 不二子

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原不二子

上智大学外国語学部国際関係史研究科博士課程修了。 祖父は「憲政の父」と呼ばれた尾崎行雄、母は「難民を助ける会」会長の相馬雪香。母の薫陶により幼い頃からバイリンガルで育ち、21歳の時MRAスイス大会で同時通訳デビュー。G7サミット、アフガニスタン復興会議、世界水フォーラムなど数多くの国際会議を担当。AIIC(国際会議通訳者協会)認定通訳者で、スイスで開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)、ILO総会の通訳を務め、最近では、名古屋における生物多様性(COP/MOP)会議、APEC女性リーダー会議、アジア太平洋諸国参謀総長会議、ユニバーサル・デザイン(IAUD)会議、野村生涯教育センター国際フォーラム等の通訳を務めている。

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