INTERPRETATION

第36回 「ソーシャル・ファーム」

原不二子

Training Global Communicators

これは、まさに未来を先取りした概念です。日本語のカタカナで「ファーム」と書くと、「農家」とも「企業」とも読めますが、ムハマド・ユヌス氏の言葉を借りれば、「ソーシャル・ファーム」とは、お金を儲けるためではなく、世の中の課題を解決する目的で行う事業を指すのだそうです。

2006年にノーベル平和賞を受賞されているユヌス氏は、バングラデッシュ出身の経済学者で、大学での講義中、窓の外の骨と皮だけに痩せ細った貧しい人々の姿を見て、世界から貧困をなくすことを自身の天命として、マイクロクレジットのグラミン銀行を創設されました。

私が理事を務め、民主政治の健全な発展や世界平和の実現に貢献している人や団体を顕彰している尾崎行雄記念財団からも、1998年、同氏へ第3回咢堂賞を授与しています。

ユヌス氏の志をついで、日本では恩賜財団済生会理事長の炭谷茂氏が貧困、失業、病気、社会の孤立から人を救うため、2000のソーシャル・ファームを目指して頑張っておられます。 

―7月23日昭和女子大学人見講堂での通訳業務より―

原 不二子

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原不二子

上智大学外国語学部国際関係史研究科博士課程修了。 祖父は「憲政の父」と呼ばれた尾崎行雄、母は「難民を助ける会」会長の相馬雪香。母の薫陶により幼い頃からバイリンガルで育ち、21歳の時MRAスイス大会で同時通訳デビュー。G7サミット、アフガニスタン復興会議、世界水フォーラムなど数多くの国際会議を担当。AIIC(国際会議通訳者協会)認定通訳者で、スイスで開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)、ILO総会の通訳を務め、最近では、名古屋における生物多様性(COP/MOP)会議、APEC女性リーダー会議、アジア太平洋諸国参謀総長会議、ユニバーサル・デザイン(IAUD)会議、野村生涯教育センター国際フォーラム等の通訳を務めている。

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