INTERPRETATION

第77回 「奇妙な、風変わりな」

柴原早苗

すぐ使える英語表現

rum 奇妙な、風変わりな、おかしな

That pharmacy’s policy is to promote health but they are selling cigarettes. That’s a rum contradiction!

あの薬局は健康を普及させようとしているのに、たばこも売っています。奇妙な矛盾ですよ!

 私は日ごろCNNの放送通訳に携わっています。どのキャスターも個性豊かなのですが、中でも一人、実に通訳のし甲斐がある方がいます。リチャード・クエストというイギリス出身の男性です。もともとBBCワールドでビジネスニュースを担当していました。1998年に私がBBCワールドで働いていた頃のクエスト記者は、ロンドンのスタジオがメイン。BBCの社食でよく見かけたものです。そんな氏も今ではすっかりCNNの顔となっています。

 今回ご紹介するrumという言葉もクエスト記者が使っていたものでした。ある製薬会社に関するニュースで出てきたのです。rumはお酒のラム酒の方が有名ですが、イギリス英語ではやや古い表現で、「奇妙な、風変わりな」という意味を持ちます。

 なぜこうした語義になったのかは定かではありません。辞書を引いてもorigin unknownと記しているものさえあります。初出も18世紀、16世紀など様々です。

 ところで紙の辞書を引くと私はつい周囲の単語に目が行きます。お酒の「ラム」はrumbullionという言葉を省略したものだそうです。しかもこの単語の意味は何と「暴動」!電子辞書の「ジーニアス英和大辞典」には「この酒を飲んで暴動を起こしたことから」と書かれていました。・・・となると気になるのが他のアルコール。whiskeyの原義は「生命の泉」なのだそうです。興味深いですね。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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