INTERPRETATION

第268回 「わらにもすがろうとする」

柴原早苗

すぐ使える英語表現

grasp at straws (わらにもすがろうとする)
I searched everywhere trying to find my papers, but I knew I was grasping at straws. (書類を見つけるべくすべての場所を探したのですが、わらにもすがろうとしていたのは自分でも明らかでした。)

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日本語の「わらにもすがろうとする」は英語でも同じ単語を用いて、grasp at strawsと言います。graspの代わりにclutchやcatchも使えます。なお、graspは通常、進行形です。一説によれば、この表現がお目見えしたのは16世紀のことで、イギリスの人文主義者で「ユートピア」を唱えたトマス・モアの”A Dialogue of Comfort against Tribulation”が初出とされています。

ところで「わら」は漢字では「藁」ですが、「常用外漢字」です。常用外漢字は日常で使うことはできますが、公文書では使わないとされているのですね。よって、新聞などで「まん延」「ひっ迫」など一部が平仮名になっているのは、常用外であるからです。ちょっとややこしいですよね。個人的には全て漢字にして読み仮名が付いている方が、雰囲気もつかめると思います。

ところでstrawは飲み物を飲む、あの「ストロー」という意味もあります。こちらの語源は、昔、ライ麦の茎の藁の部分を筒状にして飲み物用に使ったからだそうです。一方、イギリスの政治家にJack Straw氏(ブレア政権で外務大臣や内務大臣を歴任)がおられますが、名字のStrawは藁関連の職業を表すとされています。名字の由来も調べてみると面白いですよね。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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