INTERPRETATION

第39回 Word of the Year for 2019 : they

グリーン裕美

国際舞台で役立つ知識・表現を学ぼう!

毎年、年の暮れが近づくとユーキャン新語・流行語大賞が発表されるのが楽しみです。海外で暮らしているとよほど日本の情報(注:固いニュースだけではなく幅広く)を追っていないとノミネート語30語はもとよりトップ10の10語でさえピンとこないものもあります(参照サイト, ちなみに今年の年間大賞は「ONE TEAM」)。同様に、英米の辞書出版社から発表されるWord of the Yearも興味深いです。今年Oxfordが選んだのはclimate emergency(気候非常事態)、Collinsはclimate strike(気候ストライキ)と環境問題への意識の高まりが反映される言葉が選ばれたのに対して、Merriam-Websterが theyを選んだのが印象的でした(参照サイト)。

代名詞のtheyは私たち皆が中1の英語で習いましたが、どうして2019年のWord of the Yearに選出されたのでしょうか?どうしてtheyを検索する人が前年度から313%も増えたのでしょうか?

英語で話すときに話題に出た人の性別が分からないとhe か sheのどちらを使えばよいのか分からずに困ることがあります。特定の人を指す場合だけでなく、everyoneやsomeoneのような中立的な単数の場合も迷います。書き言葉ではhe or sheなどという表現も見かけますが、話し言葉であまり使われません。こんなときheやsheの代わりにtheyが使われます。ただし、これは別に最近の用法ではなく600年以上も前から使われてきたそうです。

では2019年に使用が急激に伸びたため辞書に追加された語義はというと、「ノンバイナリー(性自認が男性でも女性でもない人たち)を表す単数形の代名詞(a pronoun referring to one person whose gender identity is nonbinary)」です。

今年9月にイギリスのシンガーソングライター、サム・スミスさんがインスタグラムで「My pronouns are they/them (自分を表す代名詞はtheyやthemだ)」と投稿して話題になりました。他にも様々な著名人がノンバイナリーにthey/themを好んで使うようになり、ソーシャルメディアでもよく見かけるようになりました。

日英通訳の養成講座でよく聞かれる質問(FAQ)の一つが「英訳の際に性別が分からない場合は代名詞をどうするのか」です。特に日本語の発言は、主語がなかったり名前が出ても姓(苗字)だったりで性別が分からないことが多いですね。そんなときには単数でも迷わずthey/their/themを使いましょう。

さて、今年もいよいよ終わりとなりました。新タイトルのもとで1年間お読みくださってどうもありがとうございました。素敵な年末年始をお過ごしください。

2019年12月28日

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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