INTERPRETATION

第11回 はなぢ通訳

寺田 真理子

マリコがゆく

いや、あせります。さすがに。

ミーティング前に、いきなり鼻血が出たりすることが、たまーにですが、あるんです。社内通訳だったら、「鼻血が出たあ~!」とかなんとか騒ぎながら、イベントとして楽しむ余裕もあります。もし、最悪の事態になって、ミーティング中に鼻血が・・・なんてことになったとしても、顔見知りなら、それもご愛嬌です。(ホントにそうなんでしょうか・・・?)

でも、これが単発のお仕事だったりすると、ちょっとパニックです。出張でホテルに泊まることがあるんですが、乾燥してるんですよね、ホテルの部屋って・・・。ある仕事のとき、かなり疲れた状態でホテルに泊まったんです。そうしたら、朝、着替えて食事も終えて、さあこれから仕事に出かけるというときに、いきなり鼻血が・・・。

「逐次通訳だったら、下向かなきゃいけないし。同時通訳だったら、しゃべりまくって体温も上がるし。どっちにしても、鼻血に出てくれといわんばかりの状況よね?もう、カモーンて感じ?」

お客さんにもインパクトあるよなあ~。絶対覚えてもらえるよなあ~。『この間の通訳さあ』、『あ、あの鼻血のね』なんて。でも、そんなふうに覚えられたりしても、いやだなあ・・・。エージェントさんにご指名がきたりして、『この間の鼻血の通訳さん、またお願いします』なんて・・・最悪!」

「せめて鼻血が似合う顔だったら・・・。いや、結構いけるかもよ?」

パニックのあまり、わたしの思考はかなりあやしくなっていましたが・・・。無事に鼻血はとまり、衝撃のデビューはしなくてすんだのでした。

そんなパニックを経験した通訳者もきっとたくさんいるに違いない・・・と信じているんですが。いや、「デビュー」しちゃった通訳だって、絶対いるはず。「この間ブースの中でいきなり鼻血噴いちゃってさ、あわてて交代してもらったわよ~」とか。そんな逸話の持ち主とか、いるんじゃないかしら?

あの・・・はなぢ通訳の方、いらっしゃいませんか?

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

END