INTERPRETATION

第30回 介護と通訳

寺田 真理子

マリコがゆく

通訳に似ている仕事って、どんなものがあると思いますか?

わたしが似ていると感じるのは、意外かも知れませんが、介護の仕事です。

『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと』という本を翻訳していたときに、「おおっ!これはまさしく通訳のことでは!?」と感じた記述があったんです。

“In taking up caring as a job, a big problem you may face is that few people really understand what you are doing. There is an ignorant view that suggests that you are producing nothing, so your job has little value. People may not appreciate what caring involves………Because of such attitudes you may have difficulty at times in feeling that your job is worthwhile, or even you yourself have value. It doesn’t help when the pay is generally far below what this kind of work deserves.”

文中の”caring”を”interpretation”に置き換えたら、そのまま通訳の話として通じちゃうじゃないですか。意訳したら、きっとこんな感じです。

「通訳の仕事のなにがとにかく大変って、仕事をわかってもらえないってことよ『通訳なんて何も生み出さないんだから価値がない』なんていう、わかっちゃいない人がいるんだよね。通訳が何をやっているかなんて、ちゃんと理解してもらえないし。・・・そんな調子だから、『こんなことやってて意味あるのかなあ』なんて思っちゃったりするし、自分にも自信もてなくなったりするんだよね。しかも、こんなきつい仕事なのに、もらえるのはそれに比べたらたいしたことないし。これってありえなくない?」

意訳しすぎ?まあ、まさかこうは訳しませんでしたが、この部分だけ妙に力が入ってしまったのも事実です。

「通訳はいやだ。だって、クリエイティブな仕事じゃないじゃん」と、言われてムッとしたことがあります。それには、通訳という仕事への自負と共に、クリエイティブなものじゃないという気持ちが自分の中にもあったからなのかなあと思います。

目に見えるものや、新しいものを作り出すクリエイティブな仕事はわたしも大好きだし、そういう仕事も手掛けて通訳とはまた違う楽しさを感じてもいます。だけど、通訳が何も生み出していないという見方にはやっぱり賛成できません。

目には見えなくても。そこにいる人たちのつながりを生み出したり。コミュニケーションを手助けしたり。通訳も介護も、そういう大事な役割のある仕事だと思うのです。

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

END