INTERPRETATION

第43回 ぶっちゃけないで

寺田 真理子

マリコがゆく

通訳のみなさん、通訳をするときに「ぶっちゃけ」って使っていますか?

この言葉がすごく嫌いなんです。だって、なんだか語感がきたないじゃないですか。汚れたものをぶちまけられるような感じがしませんか?大きなゴミ箱をひっくり返して、中のゴミを力いっぱい散らかしているような。そんなイメージが浮かんでしまいます。

「通訳たるもの、そんなきたない言葉を使ってはいけない!」

そう思っているので、使いません。もちろん、普段も使わないように気をつけています。だって、普段から使っていると、ついうっかり、出ちゃうでしょ?(じゃあ、普段の言葉遣いが美しいのかと言われると困りますが・・・。そのへんのツッコミはなしにしてくださいね!)

そんな抵抗にも関わらず、どんどん「ぶっちゃけ」は浸透してしまいまして。渋谷にいそうな若者が使う言葉から、おじさまたちまでもが広く使う言葉に育ってしまいました。

困るのは、インパクトの強さです。「ぶっちゃけ」と言われてしまうと、なんだかそれに取って代わる言葉が見つからないのです。この言葉が出てくる前は、「本当のところを言いますと」とか「実を言えば」とか、そういう言葉を使っていたんですよね。でも、「ぶっちゃけ」の持つ「暴露感」が出ないのは事実です。

お客さまも結構使うんですよね。「まあ、ぶっちゃけたところを言えばですね~」なんて言われると、ついこちらも「ぶっちゃけ」を使いそうになってしまいます。

通訳のときに「ぶっちゃけ」を当たり前のように使う通訳者もいるそうですが、わたしはやっぱりこれには反対です。日本語のアウトプットの質がすごく損なわれちゃうと思うんですよね。せっかくの通訳も、「ぶっちゃけ」の破壊力で台無し、みたいな・・・。

将来、こういう言葉がどんどん浸透していくと、通訳のときに使われる言葉も変わっていくんでしょうか?

「ていうか~、ぶっちゃけ~、マジでそれ、ヤバくね?」

・・・そんな通訳、いやです!

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Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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