INTERPRETATION

第44回 訳しやすい人、訳しにくい人

寺田 真理子

マリコがゆく

通訳をするのにも、「訳しやすい人」と「訳しにくい人」がいますよね。

どういう人が訳しやすいかは、相性の問題もあるので人それぞれ違いがあるでしょう。それでも、通訳者にとって「訳しやすい人」って、ある程度共通していますよね。

どういう人かというと、まずは「話の内容がわかりやすい人」ですよね。そして、「論理的に話ができる人」じゃないでしょうか。通訳のほうで内容の「編集」をしなくてすむので、とても助かります。そのまま訳せばいいんですから。こういう人はたいてい言語能力が高いので、意味がわからなくて質問したりしても、適切に言い換えをしてくれます。

英語のスピーカーだと、英語の発音が聞き取りやすいというのも大事なポイントですよね。通訳にとって恐怖の(?)インド人英語とか。中国系のスピーカーも、やっぱり独特のアクセントがありますし。

「訳しやすい人」には、断然欧米系の人が多いですね。やっぱり、訓練されているからでしょうか。それに比べ、日本人の「訳しやすい人」には残念ながら滅多にお目にかかれません。

「いや、この間ね、えー、金曜日。金曜日に。いや、結論から言います。金曜日に。あ、やっぱりいまのなしです。金曜日に・・・」

こんな報告を受ける上司が、わたしの横で通訳を待っています。でも、この発言でわたしに一体何を訳せというんでしょう?そのまま訳そうものなら、かえって混乱させてしまうどころか、わたしの通訳能力まで疑われてしまいます。

流れるような話し方をしてほしいとは言いません。ただ、せめて、「何が言いたいのか」をはっきりさせてもらえないと、こっちも商売あがったり、なのです。言いたいことがないのにやたら言葉数だけは多いなんていうのも、いただけません。

「訳しやすい人」ではなくても。どんなにつたなくても。一生懸命何かをやっていて、それを伝えようと頑張っている人には、「精一杯伝わるように通訳してあげよう」と思えるものですよね。

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記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

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『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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