INTERPRETATION

第62回 ハッピー通訳(前編)

寺田 真理子

マリコがゆく

「通訳者には、不機嫌な女が多い」

自分のことかと思ってドキッとした方、要注意です!鬼のような顔で仕事をしていないか、今すぐ鏡でチェックしたほうがいいですよ!

通訳コーディネーターだった頃、「どうして女性の通訳者って、みんなあんなにいつも不機嫌なの?ああはなりたくないなあ」と常々思っていました。ところが、自分が通訳者になってみれば、不機嫌街道まっしぐら!

仕事を続けていると、ある程度は仕方ないのかもと考えるようになりました。資料と勉強に追われる、すごいプレッシャーの中での仕事。周囲の無理解。しかもフリーランス。…そんな条件が重なれば、まあ、性格がゆがんでいくのも想像がつきます。

そしてもうひとつ。通訳者は、どこまでいっても「部外者」。その距離感が楽で心地いいっていう部分もありますが、自分はけっして主役じゃないんですよね。疎外感はやっぱりつきまとうんです。

通訳技術が磨かれる喜びというのは、たしかにあります。むなしいミーティングの通訳が多い中、技術の向上だけに目を向けて、そこに喜びを見出すことで自分のモチベーションを保つようにしていました。でも、それってなんだか悲しいですよね。

数を多くこなしても、通訳者としてやりがいを感じられる瞬間がそれに比例して多くなるというわけでもないんです。やりがいっていうのは、やっぱり、そのときの自分のパフォーマンスや、技術的なことだけでは得られないんですよね。つきつめていくと、どうしても、「何の通訳をしているのか」「何のために通訳をしているのか」ということが問題になってくるんです。

「会議通訳者として大御所になりたい」という目標を持っている人もいると思います。業界の中でのポジションがモチベーションになる人もいるでしょうし、難しい仕事をこなせるようになることで高い満足感が得られる人もいるでしょう。でも、わたしは「それはちょっと違うかな」と思うんです。

わたしは、通訳していて自分がハッピーじゃないと、嫌なんです。

「あらゆる分野を経験して、通訳者として登りつめたい」というより、自分の価値観に沿った仕事ができること、「この仕事をしていてよかった」と思える瞬間がたくさんあること。そっちのほうがやっぱり、わたしにとっては大切なんですね。

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Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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