TRANSLATION

第101回 企画をどうやって進めているの?④

寺田 真理子

あなたを出版翻訳家にする7つの魔法

「企画をどうやって進めているの?②」で企画をお送りした出版社さんから、お断りのお返事がありました。

翻訳に企画書作成、おまけにコピーと製本。そんな手間暇をかけてこのお返事だと、「こんなことなら、あそこまでして送らなければよかった」と思う方も多いかもしれません。だけど私は、「やっぱり、あそこまでして送ってよかった!」と思いました。

というのは、結果として企画は通らなかったものの、しっかりご検討いただけたことが伝わってきたからです。絵本に対するご感想や、通らなかった理由も細かく教えてくださいました。社員全員がやりたい企画でないと通らないそうですが、愛情をもって本づくりをされていることが感じられて、素敵な出版社さんだなと思いました。3か月以内というお約束通りにお返事もあり、きちんと対応してくださることもわかりました。

最初に条件を知った際にやめていたら、こういう情報は得られませんでした。だけど実際に企画をお送りしてみたことで、信頼できる出版社さんだと確認することができたのです。今後また別の企画を持ち込むことも考えられますし、持ち込みをしたい方が周囲にいた場合に、おすすめすることもできます。

ちなみに、返却不要のコピーを送るようにとのことでしたが、返却もしてくださいました。私のつたない自家製コピー製本を見て、「これをつくるのは大変だったんだろうな」と気の毒に思ったのかもしれませんが……。

ともかく、今回の結果だけ見れば残念でしたが、長い目で見るとプラスだと捉えています。

実は、ここ最近、長年編集者さんにお預けしていた絵本が結果的に戻ってきてしまうなど、数日のうちにまとめてのべ9冊のおことわりをいただきました。新記録です(笑)。おかげで私のメンタル強度はうなぎのぼりで、厄払いができたと思って次をがんばります。というより、もうすでに次の持ち込みをしていますので、またご報告したいと思います。

先日も、翻訳家の方たちの書いた本を読んでいたところ、数百冊の原書を読んだうち、数冊を自ら翻訳したことが書かれていました。目の前の翻訳書一冊を目にした時、その一冊しか存在を認識できないものです。だけど実際には、その背後に何十冊、何百冊という蓄積があるんですよね。翻訳書が花なら、蓄積は根の部分にあたるでしょう。花が咲かないなら、根に栄養が足りないのではと考え、蓄積に励んでみる。それが結果的には花を咲かせる近道になるでしょう。

※ひとつ、お知らせです。執筆協力させていただいた『父と娘の認知症日記』が間もなく発売になります。よかったらご覧になってみてください。

※この連載を書籍化した『翻訳家になるための7つのステップ 知っておきたい「翻訳以外」のこと』が発売中です。どうぞよろしくお願いいたします。

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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