TRANSLATION

第174回 出版翻訳家デビューサポート企画レポート⑱

寺田 真理子

あなたを出版翻訳家にする7つの魔法

まずはA社にアプローチしたKさん。お問い合わせ窓口からのご連絡にすぐお返事があったので、Kさんは企画書と試訳を送りました。しばらくしてお返事があり、結果は残念ながらお断りでしたが、検討プロセスについてのていねいな説明がありました。

お返事すらない出版社もある中で、とても誠意のある対応をしてくれたA社にKさんは好印象を持ちました。そこで、どのようなテーマやジャンルならご関心があるか伺うとともに、翻訳や下訳、リーディングなど、機会があればお声掛けいただきたい旨をお伝えすることにしました。

ひとつの企画だけなら「A社とはご縁がなかった」という結論になってしまいますが、今後多くの作品を翻訳していくと考えれば「いい出版社の候補を見つけた」と言えるでしょう。ぜひこうしてご縁をつないでいってほしいものです。

A社のお返事を受けて、Kさんは次の行動に移ります。原書で扱っている社会派の題材について、関連する団体に働きかけることにしました。その団体に知人が関わっていたので、その知人を通してとっかかりを探すことにしたのです。

しばらくご無沙汰している相手だと、こうして伝手をたどろうと思っても、なかなか連絡がとりづらいものです。遠慮もありますし、腰も重いですよね。Kさんも、伝手があると気づきながらも、最初はやはりA社からアプローチしたい思いがあったようです。だけどA社のお返事があったことで、知人に連絡する決心がついたのでしょう。

実は、Kさんは最近、転職をされています。出版関係のお仕事に移られたのです。そこで出版翻訳をするわけではありませんが、夢を叶えるために少しでも近い業界にいたいとの思いから転職を決めたのでした。

そのお話を伺ったとき、そこまでするのかと思って驚きました。でも、実際に夢を叶えた方々の行動を分析してみると、そこまでするのかと思うことをしているんですよね。

Kさんも思い切って動いてみたことで、新しい勤務先での伝手もできるでしょうし、アプローチの可能性も広がっていくことでしょう。読者のみなさんにとっても、「Kさんはそこまでするのか。だったら自分もこのくらいやってみよう」とハードルを越えていくきっかけになってくれるのではと思います。

Kさんの進捗については、また追ってお伝えしていきますね。

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Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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