INTERPRETATION

第226回 「野心的過ぎる」

柴原早苗

すぐ使える英語表現

a bridge too far (野心的過ぎる) 
I think the government’s plan would be a bit of a bridge too far. (政府の計画は、ちょっと野心的過ぎると私は思いますね。)

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今回ご紹介するa bridge too farという表現。私が初めて出会ったのは、放送通訳現場でした。トランプ政権でコロナウイルス対策の陣頭指揮をとる国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長がこのフレーズを用いたのです。「秋学期までにワクチンを開発するという計画は野心的過ぎる」という文脈で述べたものでした。

この表現が出てきた際、私は大いに戸惑いました。「橋」「遠すぎる」という辞書的な意味を羅列したところで埒が明かないからです。このような時は、画面に映るファウチ所長の表情と、前後の文脈で何とか類推するしかありません。確か私はこのとき「あまりにも早すぎる考え」と訳したと記憶しています。ただ、自信はありませんでした。

ネット上の英和辞典や手元の電子辞書にもこの語義は出ていなかったため、さらに検索したところ、この表現は1977年のアッテンボロー監督による映画作品名「遠すぎた橋」と同一でした。この作品は第二次世界大戦を描いたもので、連合軍のパラシュート部隊が降下作戦を実行したものの、ドイツ軍に敗れた様子が描かれているそうです。もしこの映画を見ていたら、内容から推測して「無謀な作戦」「大大的過ぎる」といったことが訳語として出てきたことでしょう。中身を知ることがいかに大切かを痛感させられた、今回の表現です。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学非常勤講師。 上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。 ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。 NHK「世界へ発信!ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。 ESAC(イーザック)英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。 通訳学校にて後進の指導にあたるほか、大学での英語学習アドバイザー経験も豊富。 著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)、「英検分野別ターゲット英検1級英作文問題」(旺文社、2014年:共著)。

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