INTERPRETATION

Vol.54 「敷居の低い通訳者を目指します!」

ハイキャリア編集部

通訳者インタビュー

【プロフィール】

松林由香さん Yuka Matsubayashi

幼少期をドバイ・南アフリカにて過ごす中で英語を勉強し始める。

その後日本の大学へ進学し、在学中に受講した授業をきっかけに通訳に興味を持たれ、

アルバイトにて実際の通訳業務もご経験。

より通訳を勉強するためにイギリスの大学院へ進学・卒業し、一旦企業に就職した後、

多くの通訳・翻訳経験を経て、現在は外資系製薬会社にてインハウス通訳としてご活躍中。

Q1、今回の通訳者インタビューは松林由香さんにお越しいただきました。私工藤紘実と松林さんとの出会いはまだ大学生の時でしたね。まず英語との出会から教えていただきたいのですが、確か松林さんは帰国子女でしたよね?

はい父の仕事の関係で2歳から6歳までをドバイで、10歳から12歳まで南アフリカで過ごしました。その後大学3年生の時に交換留学でイギリスに1年、大学院もイギリスに行きました。トータル8年間を海外で過ごしたことになります。

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Q2、ドバイでは英語教育を受けていたのですか?

はい、ドバイはアラビア語圏でしたが、砂漠の真ん中の英語の幼稚園に通っていました。30年前のドバイは今とはずいぶんイメージが違います。蛇口をひねると水と一緒に砂が流れていました。一度幼稚園でお迎えが来なくて、泣きながら砂漠を一人で歩いて帰ったこともあります。毎日サバイバルで貴重な体験でした。

Q3、通訳者を目指そうと思ったきっかけを教えてください。

きっと今日のインタビューで聞かれるだろうなぁと思って考えていたのですが、特にこれといったきっかけはないんです。南アフリカで暮らしていた時も、周りはメイドさんや庭師など外国人ばかりでした。ちょうど私は小学校高学年で何でも吸収する時期だったので、自然と英語の勉強を頑張っていろんな人とコミュニケーションしたいと思うようになり英語の勉強に取り組みました。

具体的に通訳者に興味を持ったのは大学三年生の時です。大学で通訳入門の授業があったので何気なく専攻したのがきっかけでした。その授業に参加したら本当に面白くて、夢中で勉強しました。言葉が入ってきてそれを他の言葉に置き換えて訳をするということが、水泳をした後のような心地いい疲労感でした。そんな時先生に「テーマパークの建設現場で通訳のアルバイトの仕事があるのでやってみませんか?」と声をかけていただいき工藤さんをご紹介していただきました。

Q4、そうだったのですね。それからテーマパークで実際に通訳の仕事をしていただく訳ですが、授業と実際の現場で通訳をするのは違いましたか?

はい、最初はなかなか現場になじめず大変でした。授業とは違って本当に難しかったです。

授業のテープは分からない場合は何度も聞き直すことができますが、現場に出ると当然ですが自分ひとりだし、自分が聞き取れなければ誰も教えてくれないし、利害関係も発生することが違うと思いました。

でも実際に現場に出てみて、想像していたより通訳の仕事は面白かったです。勉強している時は自分に対する手ごたえしかないけど、現場では自分のやった仕事がその場で目に見えます。聞いている人の表情で自分の通訳を理解出来ているのかいないのかすぐにわかりますし、まるでそこに通訳者がいないかのように会議が進む時はやりがいを感じます。大学の授業の時に通訳という仕事を知って、アルバイトからスタートできて本当にラッキーだったと思います。実際に現場に出てもっと通訳のことを勉強したいと思い、イギリスのバース大学院に進みました。

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Q5、大学院を卒業した後、すぐに通訳者にならずに一旦就職されていますよね?

はい、それも工藤さんのアドバイスで決めました。最初の仕事をご紹介いただいたので、私はすごく工藤さんの影響が大きいんです。今でもそうです。

それは責任重大ですね。(笑)

工藤さんから卒業後すぐに通訳者になるのではなく、一度企業で社会人として会社の動きや組織の機能を勉強したほうがいいとアドバイスしていただきました。

そうでしたね。思い出しました。(笑)

私としては通訳の勉強もしたし、すぐにデビューしたかったのですが、アドバイスに従って通信会社に一旦就職しました。結果、私にとってはすごくいい経験でした。

Q6、通訳トレーニング以外にもいろんな勉強をされていますよね?

はい、「放送翻訳」の勉強もしたことあります。もともと放送通訳に興味があって調べていたところ、「放送翻訳」という仕事があることを知りました。私は映画など動画が好きなので、どんなことを勉強するのか知りたくて学校に通いました。テレビや映画を見ながらその情報を要約する作業なのですが、通訳する時とは違う頭を使う感覚です。映画の字幕翻訳の仕事などいくつか実際にお仕事も紹介してもらいました。

語学以外でも昔から子供に興味があって保育士の資格も取りました。資格には心理も解剖もあったので、ユーキャンで資格を取りました。とにかく好奇心が旺盛で、一人焼き肉にも行きます。一人で焼き肉を食べているとどう思われるんだろうと言うことより、新しいお店に入ってみたいという好奇心のほうが勝ってしまいます。勉強が好きなのは、好奇心を満たすためです。この仕事の本当にいいところは、何を勉強してもいつかは仕事に繋がるところです。好奇心が強い私にはぴったりの仕事だと思います。

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Q7、広告代理店で企業内通訳者として仕事をした時は非常に忙しかったと聞いています。どういう生活だったのでしょうか?

広告代理店なのでクライアントへのプレゼンテーションの前はスタッフと一緒になって徹夜で仕事をしました。私は通訳者ですが、お茶を汲んだり、コピーをしたりという通訳以外の仕事も必要であれば積極的にやっていました。通訳者としてより、チームの一員としてプロジェクトに参加しているつもりでした。言われたことは絶対に「NO」と言いません。通訳者なのでこの仕事はしませんとか、ここからここまでと言われているのでディナーの通訳は出来ませんとか、そういう話をよく聞きますが、私は出来ることは何でもやります。ホチキス止めであっても、レイアウト変更であっても、それでミーティングがスムーズに進むのではれば喜んでやります。

松林さんが常にクライアントからのリクエストが高い理由がわかったような気がします。(笑)

私は普通に生きていてもいやなことがないです。楽しみを見つけるのが上手なのかもしれません。実は通訳仲間から「あなたが何でもやると、私達もやらなきゃならなくなるのでやめてほしい」とクレームを言われたこともあります。その場では「すみません」と謝りましたが、よく考えてみたら私がサービスをしているのは通訳者ではなく、ミーティングをしているお客様だと気付きました。やっぱり頼まれれば何でも引き受けてしまいます。

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Q8、このコーナーは通訳者を目指している人が多く読んでいます。英語の勉強法について教えてください。

まず必ずやったほうがいいのがシャドウイングです。30分ぐらいの自分の好きなニュース番組などを教材として選んで、シャドウイングをしていました。これで通訳者に不可欠なスキルでもある、聞きながら話すという能力を身につけました。慣れてきたら、段々シャドウイングの間隔を長くしながら練習しました。それからWebで自分の好きなトピックを選んで、サイト・トランスレーション(以下サイトラ)の練習もすいぶんやりました。

サイトラをやると発音や意味が分からない単語出てくるので、その単語を書きとめて覚えました。私は暗記が得意なほうではないので、単語を文字ではなく絵をイメージしながら覚えています。また単語を分解したほうが覚えやすい場合は分解して覚えます。

通訳者になってからは事前準備が出来るようになるので、あらかじめ資料をもらったら、まずそれで自分の中でリハーサルをします。スライドを見ながら「もしも自分がプレゼンテーターだったら、きっとこういう風に言うだろうな?」と想像しながらリハーサルをします。今は勉強時間も限られているので、事前に勉強をする時間を決めてその時間内で集中的に勉強します。絶対に事前に決めた時間内で終わらせると自分の中でルールを決めて取り組みます。例えば時々翻訳の依頼も受けるのですが、金曜日納期だとしたら納期ギリギリではなく、水曜日までには終わらせるようにします。変更があった時とか、何か自分が引っかかった時にも、調べる時間を確保することが出来ます。

Q9、プライベートな時間はどうやって過ごされていますか?

私は和太鼓を17年間やっています。(すごい腕の筋肉ですね?)

NYで公演したこともありますし、今年は様々なお祭りが震災で中止になってしまったのですが、毎年佐渡島で行われる祭りは今夏もあるので行ってきます。スクワットしながら横打ちなので結構体力使います。本もすごく読みます。軽いものなら1日2冊読むこともあります。乱読ですが英語も日本語の本も両方読みます。

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Q10、最後に通訳者を目指す人に何かメッセージをお願いします。

私は自分で敷居の低い通訳者だと思います。依頼する方からすれば、頼みやすいだろうし、何でも言えるし、きっとあまり気を使わなくてもいいと思います。私は自分のような通訳者を見たことがないんです。みんなカチっとしていて目標やビジョンをしっかり持って仕事をされています。ただ私は今後通訳を目指す若い人に、自分の快感のために、気持ちいいから通訳をするとか、楽しいからやるっていうのでもいいんだよというのを伝えて行きたいと思います。

小さい時の夢はパイロットでした。でもパイロットは身体的な条件が厳しかった。でも通訳は自分さえ興味があれば飛び込めるし、合うか合わないか肌で感じることが出来ます。「通訳・翻訳者像」というのがどうしてもハードルが高そうに見えてしまいますが、最初はあまり構えないで、興味があるから試してみようという感覚でいいのではないでしょうか?

大学院で一緒に通訳クラスを取っていた友達の中で実際に通訳の仕事をしているのは私だけなんです。なぜなら漠然と、「通訳って難しそう」って最初やる前から思ってしまうんです。自分の中でバリアを作って、やってみたいけど最初から難しそうだから無理だよねと諦めてしまうのは本当にもったいないと思います。

取りあえず興味があれば、深く悩まないでやればいいと思います。自分が楽しいと思えたら続ければいいし、なんか苦しくて、その苦しさがネガティブな苦しさだったら辞めればいいと思うんです。苦しくても楽しい苦しさだったら、続けてみたらいいと思う。まだ実力もないし、お金がないしなど、そういうことにとらわれずやったらいいと思います。

編集後記:

松林由香さんとの出会いは彼女が大学三年生の時でした。その時の印象は今でも全然変わっていません。いつ会っても満面の笑顔で、自然体で、心から通訳という仕事を楽しんでいるのがよくわかります。今日の話を聞いて、何故いつもクライアントからリクエストが来るのか、その理由がよくわかりました。 工藤紘実

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テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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