INTERPRETATION

第20回  イギリス保守党党首選 いよいよ最終レース

グリーン裕美

国際舞台で役立つ知識・表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。今週はオーストリアのザルツブルクからお届けしています。イメージ通り湖が美しい地域です。気温は30度台と意外に高いのですが、カラッとしていて快適です。

さて先週は「10人の候補者が7人に絞られた」とお伝えしたイギリス保守党党首選、つまり次のイギリスの首相を決める選挙ですが、決選投票に出る二人が保守党議員によって選出されました。次は全国の保守党員による投票によって最終的に次期党首が決まります。

では誰が残ったのかと言うと、まずは期待通り最有力候補のボリス・ジョンソン氏(略してBoJoとも)。もう一人はマイケル・ゴーブ環境大臣になるのか、ジェレミー・ハント外務大臣になるのか、かなりの接戦 (neck and neck) で結果が出るまでどちらになるのかまったく予想できなかったのですが、最終的に2票という僅差で勝ち残ったのはハント氏でした!

では、この党首選関連で使われる用語をいくつか紹介します。

次の英語表現は同党首選においてどんな文脈/意味で使われるでしょう?

  1. pratfall/gaffe/collapse
  2. the favourite
  3. go head-to-head
  4. May in trousers
  5. dirty tricks

いかがでしょう? 1)以外は誰でも知っている言葉でしょうが、すべてピンときた人はイギリス通ですね! では解説です。

1)
先週のコラムで「よほどのことがない限り」ジョンソン氏が次期首相になると記しましたが週末にジョンソン氏に関する警察沙汰があり(恋人との口論を隣人が警察に通告:ガーディアン紙参照記事)、英メディアは大騒ぎ。ただし、これが「よほどのこと」に値するのかどうか疑問です。
では「よほどのこと」って英語でどう言えばいいのでしょう? ここでは「よほどのへま」と捉えてgaffeやpratfallが使われます。gaffeはフランス語のスペルで発音はgǽf、「失言/失態」の意。pratfall はもともとは「尻もち」の意ですが「へま/しくじり」の意で使われます。
Unless he makes a pratfall/gaffe, Mr Johnson is likely to become the next Prime Minister.
The Economist誌ではcollapseが使われています。
Short of a spectacular collapse, he will be named as the next Prime Minister on the 22nd of July.
(大きなへまをしなければ、ジョンソン氏が7月22日に次期首相と発表されるだろう)

2)
中学時代に「大好きな/お気に入りの」の意で覚えたfavourite(米綴 favorite)ですが、競馬やスポーツでは「優勝候補/本命」の意で使われます。選挙では「最有力候補」。本党首選ではジョンソン氏が圧倒的な支持を得ているので
Boris Johnson is the overwhelming favourite/the clear favourite.
のように報道されています。

3)
もともと10人いた党首候補ですが、最終的には2人まで絞られ「1対1の対決」となりました。go head-to-head (with somebody)で「(~と)直接対決/一騎打ちをする」
最終的に2人が選ばれたときはこのような見出しで報道されました。
Johnson and Hunt to go head-to-head in Conservative leadership contest
(ジョンソン氏とハント氏、保守党党首選で一騎打ち)

4)
有力視されているジョンソン氏に関する報道が大半ですが、ではハント氏はどんな人なのでしょう? 金髪ボサボサ髪がトレードマークのジョンソン氏とは異なり、こぎれいな身だしなみな正統派、典型的なイギリス紳士風です。Marmite character(第19回・第82回)と言われるジョンソン氏と対照的に誰にでも好かれそうです。メイ政権下では保健相(通称Health Secretary, 正式名称Secretary of State for Health and Social Care)と外務相 (通称 Foreign Secretary, 正式名称Secretary of State for Foreign and Commonwealth Affairs)を務めました。日本で英語教師を務めた経験もあり、日本語が話せます。訪日の際には日本語でスピーチもされました(奥様は中国人)。いつもわかりやすい言葉できれいに発音されるので通訳者にはありがたい存在です。けれども最後までメイ首相を支持していた大臣でもあり、Theresa May in trousers(ズボンをはいたテリーザ・メイ→メイ首相の男性版)のように揶揄する人も少なからずいます。
ちなみにイギリス英語では「ズボン」はtrousers。pantsというと下着のパンツになります。

5)
ゴーブ環境大臣と言えば、2016年の国民投票の直後に行われた党首選で最有力候補だったボリス・ジョンソン氏を裏切ったことが記憶に残っている人も多くいます(参照記事4.stab ~ in the back)。実は今回の党首選で2番目の有力候補はゴーブ氏でした。けれどもジョンソン氏が3年前の復讐としてハント氏に票が集まるようdirty tricks(汚い手/卑劣な手段/不正工作)を使ったと批判されています。
Johnson’s ultimate revenge on Gove – but were there dirty tricks?(sky news
(ジョンソン氏、ゴーブ氏への究極的な復讐 —― 不正工作はあったのか?)

以上、イギリス保守党党首選(Tory leadership race)についてお伝えしました。イギリスの首相選びが少しでも身近に感じていただければ幸いです。

ところでボリス・ジョンソン氏の英語はというと。。。様々な理由で米トランプ大統領の100倍通訳者泣かせだと思います。詳しくはまた別の回で...

2019年6月23日



(オーストリア、ザルツブルグの湖畔)

 

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。

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