INTERPRETATION

第42回 Megxit ハリー王子夫妻、王室離脱

グリーン裕美

国際舞台で役立つ知識・表現を学ぼう!

年末からカルロス・ゴーン逃亡、ハリー王子・メーガン妃の電撃発表、トランプ大統領弾劾裁判、イラン核合意の破綻、新型コロナウィルスなど大きなニュースが続いています。先週末、グリンズアカデミーの特別セッションで時事問題について英語でディスカッションをしましたが、トピックを選ぶ際に受講生の方から「カルロス・ゴーンとハリー&メーガン、イギリスでどちらのほうが大きく報道されていますか?」という質問があり、目を丸くしました。というのも、イギリスではまったく比較の対象ではないからです。カルロス・ゴーンの逃亡やレバノンでの記者会見についてちらっと報道はされましたが、一般のイギリス人は恐らくほとんど誰も知らないことでしょう。一方、ハリー王子の一連のニュースは連日どのメディアもトップで取り上げています。王室に興味がない人も無視するわけにはいかない状況です。というか、もともと一般の関心が高すぎるからこそ発生した問題とも言えます。

けれども、私自身はタブロイド紙を読まないので、今回の衝撃のニュースが走るまでは、メーガン妃がどれくらいタブロイド紙に叩かれているのかほとんど知らずにいました。それが今回このような比較記事を拝読し、偏見の酷さに愕然としました。

ただ、事実関係など分からないことも多く、ここでは英語表現を中心に解説したいと思います。

1.Sussexes
英文記事をご覧になるとSussexesという言葉を見かけることでしょう。これはDuke and Duchess of Sussex(サセックス公爵夫妻)の略で、ハリー王子とメーガン妃のお二人を指します。二年前に結婚した際にこの公爵位が与えられました。HRH(下記)は使用できなくなりますが、こちらの爵位は維持ができ、Sussex Royalのブランドも使えるそうです。

2.HRH
今回話題を呼んでいるのがHRH使用の禁止令です。His/Her Royal Highnessの略で王族に使われる称号、Her Royal Highnessは「妃殿下」、His Royal Highnessは「殿下」と訳されます。これは王室の一員ではなくなることを意味しており、かなり厳しい措置と言えるでしょう。

3.Her Majesty
女王(または王)に話しかける際には、尊敬の意を示してYour Majestyが使われます。また君主を言及する際にはsheやheの代わりにHer/His Majestyが使われます。HM The Queen (女王陛下)のようにも使われます。
The Duke and Duchess of Sussex are grateful to Her Majesty and the Royal Family for their ongoing support as they embark on the next chapter of their lives.
(サセックス公爵および公爵夫人は新たな生活を始めるにあたり、女王陛下と王室一家の変わらぬ支援を得られたことに感謝しています)

4.senior royals/ senior members of the royal family
日本語の報道では「(王室の)主要メンバー」「シニアメンバー」、「高位王族」などと訳されていますが、この英語表現は今回のニュースで急に使われるようになりました。ハリー王子とメーガン妃がインスタグラム投稿で”We intend to step back as ‘senior’ members of the Royal Family(王室の第一線から退くつもりだ)” と表現したのがきっかけです。
The Queen has called an urgent meeting of senior royals at Sandringham to discuss a new role for the Duke and Duchess of Sussex.
(女王は、サセックス公爵夫妻の新たな役割について話し合うため高位王族による緊急会議を招集した)
1月13日開催された家族会議に出席したのは、エリザベス女王、チャールズ皇太子、ウィリアム王子。メーガン妃はカナダから電話で出席。

5.Sandrigham
上記4の例文で日本語訳にわざと入れていませんが、これは女王のお気に入りの邸宅で毎年家族とクリスマスを過ごすことでも知られているサンドリガム・ハウスのこと。ロンドンからは北方向に車で数時間の海辺の町にあります。日本在住の方にお勧めできるほどの観光地ではありませんが、私のうちから近い場所にあるリゾート地の一つなので、この辺りには何度か行ったことがあります。

6.Megxit
イギリスの欧州連合離脱(Brexit)にちなんで今回の騒動は「王室離脱」とも言われ、Megxitという言葉も生まれました。衝撃のインスタ投稿後は「half-in, half-out(半離脱)があり得るのか?」という議論もなされましたが、HRHの敬称返上や金銭面での独立が決まったことでclean Megxitやhard Megxit(王室からの完全な離脱/強硬離脱)などともいわれています。

7.Harry and Meghan
日本では「ヘンリー王子」と呼ばれることが主流でしょうか? 正式名はHenryですが、イギリスではずっと愛称のHarryが使われています。報道もほとんどすべてHarryです。Meghanは日本で「メーガン」と表記されていますが、英語では短母音で「メガン」に近い発音。ちなみに息子さんはArchie(アーチ―)くん(現在生後8か月)。

以上、一連の報道で出てくる表現・名称を取り上げました。婚約発表からは2年あまり(参照記事)、ロイヤルウェディングからは(参照記事)2年弱でこんなことになってとても残念です。人種差別的な発言がいまだにかなりあるのは胸が痛みます。人種のことを明示しなくても根は人種差別から発生しているような批判も多いので冷静な分析が必要だと改めて思いました。

2020年1月20日

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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