INTERPRETATION

第41回 Get more gritty this year(決めたことをやり抜こう)!

グリーン裕美

国際舞台で役立つ知識・表現を学ぼう!

私は出張がなければ週3回くらいジムに行く生活を10年くらい続けています。その割には悲しいほどに成果が出ていませんが…それはさておき、毎年1月はとても混んでいます。「あれ? どうして今日はこんなに混んでいるのかな? あ、1月だ…」と思うことが今月はたびたび。

やはり年の初めは気持ちも新たにジムに行く人も多いようです。今年は2020年代(the 2020s, twenty-twentiesと発音)、a new decadeの始まりということで「新年の抱負」ならぬ「今後10年の目標」を立てた人もいるのではないでしょうか。もしまだなら目標を決める際のアドバイスはこちら(参照記事)。

「三日坊主でもいいから何かをやってみるといい」という意見ももっともですが、成功者の秘訣について研究をした米心理学者Angela Duckworthによると、成功のために不可欠なのは才能やIQではなくGrit(グリット/やり抜く力)だとのことです。Gritとは、「長期的な目標を追求する情熱と粘り強さ(passion and perseverance for very long-term goals)と定義されています。また1週間や1カ月でもなく何年もにわたり毎日毎日続けることだ(Grit is sticking with your future, day in, day out, not just for the week, not just for the month, but for years)とも(参照動画)。

著書(GRIT; The Power of Passion and Perseverance)では次のような公式が紹介されています。

TALENT(才能) X EFFORT(努力) = SKILL(スキル)
ーー>SKILL(スキル) X EFFORT(努力) = ACHIEVEMENT(結果)

これを見て、稲盛フィロソフィーを思い出しました。5年ほど前に稲森和夫氏が英オックスフォード大学で講演をされた際、幸いにも通訳を担当させていただきました。その準備で稲森氏の著書を日本語・英語で何冊か拝読しているうちに、稲盛フィロソフィーに深く共鳴しました。実は、私のプロフィールで「グローバル社会の発展に貢献」と書いているのは僭越ながら稲森氏の影響です。稲森氏は、会社経営について真剣に考えた末、「会社経営とは、将来にわたって社員やその家族の生活を守り、みんなの幸福を目指していくことでなければならない。その上で、会社が長期的に発展していくためには、社会の発展に貢献するという、社会の一員としての責任も果たす必要があると考えた」とのこと。また利己(self-benefit)ではなく利他(altruistic efforts)の大切さもフィロソフィーとして掲げています。私自身は、微力ながらも自分は何が出来るかを考えたとき、通訳者として国と国との関係の発展に少しでも貢献できるのではないか、また教育にかかわることによって少しでも成長する人が一人でも増えれば社会の発展に貢献できるのではないかと考えました。その一方で、「社会の発展への貢献とは身近なところから」とも思い、愚息が不良少年にならず、将来社会に貢献してくれるような人に育ってほしいと願い、仕事で子育て放棄…ということにはならないよう子供たちへのサポートも私なりのベストは尽くしてきました。

少しそれましたが稲森氏によると、人生の方程式は、

● 人生・仕事の結果=考え方x熱意x能力
● the result of life or work = attitude x effort x ability

著書の中で「熱意/努力 (effort)」と「能力(ability/talent)」は足し算ではなく掛け算だと強調されていたのが印象的でした。そこでAngela Duckworth氏の方程式を見てもやはり努力と才能は掛け算になっています。

Duckworth氏の定義ではTalent(才能)とは、「物覚え・飲み込みの早さ(how quickly your skills improve when you invest your effort)」であることを考えると、努力との掛け算で結果が出る、という公式には納得ができます。Achievement の定義は what happens when you take your acquired skills and use themとあるので稲森氏のいう「人生・仕事の結果」と同じ意味のようです。

また「努力(effort)」というのは「長期間継続しなければならない」という点でも両氏の主張は同じです。

「それは分かってはいるけど、年も年だし…」とあきらめかかっている方もいるかもしれません。けれども脳科学者の池谷裕二さんによると「脳細胞は年をとっても減らない」し(参照『脳はなにげに不公平』、「年齢を重ねても記憶力は鍛えられる」(参照『記憶力を強くする』)とのことです。

またAngela Duckworth氏はGritを養うために必要なのはgrowth mindsetを持つことだと主張しています。growth mindsetとは「学ぶ能力というのは固定しているのではなく努力によって変わるものだと信じること(the belief that the ability to learn is not fixed, that it can change with your effort)」、つまり「自分は成長できると信じること」です。

今日の努力で昨日より少し成長している喜びを感じることができれば、それがまた明日への努力とつながり、大きな目標もいつかは達成できるのではないでしょうか。

ということで、今年または今後10年間の目標に向かって、簡単にはあきらめずもうちょっと頑張ってみませんか (Don’t drop out that easily. Be more gritty and hang in there!)

私は、通訳者として、教育者として、母親として、これからの10年もグローバル社会の発展に貢献できるよう地道にがんばります! 具体的な取り組み(ミニ断食などのダイエット、諸々のトレーニングなど)に関しては三日坊主で終わることもありますが、大きな目標に関してはぶれずに続けていこうと思います。

2020年1月13日

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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