INTERPRETATION

第36回 これがどうなるっちゅうたらこうなる、それがまたどうなるっちゅうたらこうなる

寺田 真理子

マリコがゆく

通訳をしていると、「何が言いたいのかわからない」お客さまがよくいらっしゃいます。

日本人に多いんですが、長々と話しているのに要領を得なくて、「で、結局何が言いたいんですか?」とツッコミを入れたくなってしまうようなタイプです。
どうやら、「結論を述べてから背景事情を説明する」ことを苦手とする方が多いようです。

逆に、「背景事情を説明してから結論を述べる」という話し方になじんでいるようです。それでも、結論に到達してくれればまだいいのですが。中には延々と背景事情を説明するものの、いつまでたってもまったく結論に辿り着かない人もいて・・・。

このように通訳泣かせな人は結構いるものですが、その中でも印象深いお客さまがいらっしゃいました。システム開発関係のお仕事でご一緒することが多かったんですが、よく図の入った資料を使ったり、ボードに絵を描いたりして説明をしてくれました。視覚に訴える、わかりやすい情報を提供してくれているわけですから、それ自体はありがたいことのはずなんですが・・・その説明がすごいんです。

「これがどうなるっちゅうたらこうなる、それがまたどうなるっちゅうたらこうなる、そしてまたそれがどうなるかっちゅうたら・・・」

立ち上がって熱心に説明してくださるお客さま。伝えようという姿勢が素晴らしいです。

でも、それじゃ訳しようがありません・・・。

途方に暮れながらも、お客さまの指す図を見ていくと、「どうやらこういうことらしい」とわかってきます。
「このデータはサーバにあります。このデータはメインフレームに転送されて処理されます。ここはバッチ処理です。そして処理されたデータはこちらのサーバに・・・」

どうやらわたしの想像(?)は当たっていたようで、無事にミーティングは終了しました。

いくら機械で言語が処理されるようになって、将来通訳にとって代わるようになったとしても、このお客さまには絶対に生身の通訳が必要になることでしょう・・・。

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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