INTERPRETATION

第59回 社内通訳とフリーランス通訳-その7

寺田 真理子

マリコがゆく

フリーランス通訳の大変なところ。

なにしろ、「フリーランス」通訳ですから。すなわち、何の保障もないんです!

収入は不安定だし、お仕事がタイミングよく入ってくれるとも限りません。「あ~、ここにこのお仕事を入れちゃったから、こっちのお仕事がとれない~!」なんていう残念なことも。そうかと思えば、その月のメインの収入源として当てにしていたお仕事がキャンセルになって、スケジュールが大きく空いちゃったり。もちろん、それでも補償はありません。

営業だってしなきゃいけません。社内のように、黙っていても、嫌でもお仕事があるわけじゃないですから。エージェントさんに登録したり、あるいは個人でお客さまを探したりとか。マリコの場合は、新聞を読んで、「ここはもしかしたら、通訳の需要が将来あるかも!」というところに通訳の押し売りまでしてました。

「こうすれば御社の国際化が進んで、定期的に通訳の必要が生じます!国際化を進めましょう!そしてそこには通訳としてわたしがセットで!」

・・・余計なお世話です・・・。

お客さまもいい方ならいいですが、困ったお客さまの場合でも、エージェントさんが間に立って守ってくれるわけじゃありません。通訳条件も自分で整えなきゃいけないし、現場ではよそ者だし、立場は弱いですよね。お支払いのときに金銭トラブルなんかがあるとものすごいストレスですが、そういうトラブル処理も自分でしなくちゃいけません。

お仕事の請求書作成や入金確認もしなくちゃです。数字に弱いわたしには、このあたりは鬼門です。確定申告の時期は、もうパニックです。

せっかくいいお客さまとの出会いがあっても、「結局はこの場限りのお付き合いだなあ」なんて、さみしくなってしまうこともあります。しがらみがないぶん、継続的な人間関係がまわりにないんですね。

それに、自己管理!風邪をひいて休んだりするわけにいかないですからね。自分が倒れても代わりがいません。一度穴をあけたら、お金がもらえないだけじゃなく、次のお仕事だってもらえなくなっちゃいます。このプレッシャーも相当なものがあります。

こんな具合に、フリーランス通訳もやっぱり大変なのです。

みなさんは、社内通訳とフリーランス通訳、あえてどちらかを選ぶとしたら、どっちがいいですか?

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Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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