TRANSLATION

第229回 出版翻訳家デビューサポート企画レポート㊽

寺田 真理子

あなたを出版翻訳家にする7つの魔法

準備万端整えて、編集者さんにお会いすることになったSさん。緊張するタイプだというSさんは、最初は名刺交換の手が震えてしまうほどだったそうですが、最終的には落ち着いてお話ができたようです。

お話の内容を、Sさんが時系列で教えてくれました。基本的なパターンはどこの出版社でもほぼ同じですので、編集者さんにお会いする際の確認事項として参考にしていただけるのではないでしょうか。

・自己紹介(Sさんの現在やこれまでのご経験についての質問)
・原著との出逢い
・この本の推しポイント
・編集者さんが面白く感じた箇所
・実際に出版するとなった時に原書の出版社に確認したい内容
・日本で翻訳出版する時の価格や部数
・日本の読者に説明が難しそうなところ、工夫がいりそうなところ
・進めていく際の今後の流れ、時期的なこと

こちらの出版社では編集会議が2段階あり、第1段階は毎週、第2段階は毎月開催されるそうです。お話の結果、翌月の第2段階の会議を目標に、編集者さんとSさんで一緒に準備を進めていくことになりました。

Sさんのほうでは、原書の出版社に確認が必要な点に関し、著者に連絡を取って確認してもらう作業を担当します。これについては、エージェントを通して行うことが多いかとは思いますが、Sさんが著者と個人的にやり取りをされているので、こういう場合には直接のほうが早いかもしれませんね。

もうひとつ、Sさんのほうで必要な準備として、日本で出版する意義を詳しく説明する作業があります。企画書の中ですでに触れていますが、それをベースに文字数も大幅に増やし、日本の読者がより理解しやすいように書き直すのです。これも、出版社や本の内容によっては求められないプロセスですが、Sさんの場合にはこの作業はとても有意義だと思います。作業を通して原書の内容をさらに深く考えられるだけでなく、このプロセスがあることで、準備段階で編集者さんともやり取りを深められるからです。

今回お会いしてお話をした際に、企画だけでなく編集者さんの個人的な事柄にも話題が及んだそうです。Sさんも「個人的な経験や思いなど少々の脱線のお話を聞けるほうがお相手のことを知ることができて安心する」とのことですが、そうやってお互いに人柄がわかってお仕事を進めていくほうが、いいものができるでしょう。単にコミュニケーションがとりやすいから問題が生じにくいというだけでなく、お互いの持つ資質のうち、内容に関わる部分が引き出されやすいからです。

現在、一生懸命に準備を進めているSさん。とてもいい流れでここまで来ていると思いますので、この流れに乗っていきたいですね。またレポートしていきます!

【勉強でも娯楽でもない「癒し」としての読書の可能性とは?】というインタビュー記事が掲載されました。よかったらご覧になってみてください。

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※出版翻訳に関する個別のご相談はコンサルティングで対応しています。

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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