INTERPRETATION

第38回 「前後の見境をなくす」

柴原早苗

すぐ使える英語表現

go off the deep end 前後の見境をなくす

He was so upset with the new plan that he went off the deep end.

彼は新しい計画に非常に動揺し、前後の見境をなくしてしまいました。

 今回ご紹介する英文はgo off the deep endです。これは口語表現で「前後の見境をなくす」「かっとなる」という意味で、いわゆる「キレる」状態を表しています。過日、ニュースの通訳をしていた際に出てきたフレーズです。

deep endとあるので、当初私は一瞬「プールの深いところ?」と思いました。プールの浅い方をshallow endと言うからです。ただ、そのニュースではプールの話題が出てきませんでしたので、今一つ理解しづらい表現でした。

しかし帰宅してじっくり調べてみたところ、あながちプールと無関係ではなかったことがわかったのです。というのも、「deep end(プールの深い方)に入る」という行為は、ある意味で「無茶な行動」です。その無茶ぶりの発端となるのが「かっとなる」状態」なのです。そこからgo off the deep endは「前後の見境をなくす」という意味になったのだそうです。

ちなみにgo off the …を使った表現が他にあるか、気になって調べてみると色々と出てきました。go off the beaten track(変わったことをする)、go off the boil(人が興味をなくす)、go off the chart(急激に高まる)などです。一つのフレーズを機に「似たような表現はないかな?」「同じ単語を使った別のフレーズはなんだろう?」と調べてみるのも楽しい作業です。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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