INTERPRETATION

第17回 伸縮自在!通訳の15分

寺田 真理子

マリコがゆく

「じゃあ、15分交替でいきますか?」

同時通訳で、他の通訳さんと組む場合。もともときちんとしたアジェンダがないようなディスカッションなどの場合は、時間単位で担当を決めますよね。

この15分。はじめの頃は、かなり余裕なんです。

「あ、もう15分たっちゃった。もう交替?まだまだいけるわよー」

みたいな。でも、これが後半になってくると・・・

「ええ~っ!まだ5分しかたってないの!?な、長い!長すぎるよ、15分―!!

気が遠くなりそうです。

ちょうど、リレーでバトンを渡す直前の状態によく似ています。「もうダメ、倒れるーっ!!」という感じで、交替します。

「つらそうだもん、替わるよー」

そう言いたげに、相手の通訳さんが替わってくれます。で、15分後には、今度は相手がよれよれに。

「つらそうだもん、替わるよー」

そんな感じで今度はわたしが交替。お互いゼイゼイ言っていたりします。

もっとつらいときは、15分もちません。途中で真っ白になりそうになって、お互いに交代しあったり。マイクを奪い合うようにして助け合います。

1回しかご一緒したことのない通訳さんでも、大変な会議だったりすると、すっかり同士愛のようなものを感じてしまいます。だって、究極の状況で助け合うんですもんね。「戦場での激しい戦いで生まれるアツい友情」・・・といったところでしょうか。短時間で一気に仲良くなるには、つらい会議で組んで同時通訳をするのがいちばんいいのでは?恋のひとつやふたつ、芽生えてもよさそうなものですが。どっかで芽生えてないですか?

かなりもめそうな会議や、ハードなお仕事の場合。よれよれでマイクを奪い合い、助け合う姿が始まる前から想像できます。でも、「疲れてるかな?あ、ここはちょっとつらそうかな?じゃあ、代わろうかしら?」と思っても、「でも、失礼かも?」なんて、最初のうちはお互い遠慮しがちなもの。はじめてご一緒することも多いわけですから。いきなりマイクを奪っちゃうのはさすがに気が引けます。だから、そんな事態を予想して、相手の通訳さんにこうお願いします。

何かあったら、奪ってください!わたしも奪いますから!

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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