INTERPRETATION

第23回 通訳は辞書(ただしやや難あり)

寺田 真理子

マリコがゆく

通訳という仕事柄、「○○って英語でなんていうの?」 と訊かれることがよくあります。

「商品券ってなんていうの?」
そういうシンプルなものから、
「青天の霹靂ってなんていうの?」
「浪花節ってなんていうの?」
「オヤジギャグってなんていうの?」
なんていうものまで。

ちょっとした会話の中でポンと出てくるので、予測がつかないんですよね。守備範囲も広くないといけないし。通訳といえども人間なので、なんでもかんでも即答できるわけじゃないのです。(もちろん、即答できるようにしたいものですが・・・。)

不意打ちだと、あわてます。
「通訳だから、いつでもちゃんと答えなきゃ!」
そんな思いとはウラハラに、仕事をしていないときは頭を思いっきり休ませているもので、受け答えはしどろもどろ。答えようという誠意だけをあふれさせているわたしです。

でも、不意打ちされちゃうことが大半ですね。友だちとすっかりくつろいでお酒を飲んで、いい具合に酔いも回ってきたところにいきなり、

「不可抗力ってなんていうの?」

まさかの不意打ちに、一気に酔いもさめるのです。

辞書じゃないから、やっぱり忘れちゃうことってあるんですよね。仕事でよく使う表現や、専門にしている分野の単語だったらしっかりインプットされていますが。(それすらも、ちょっとブランクがあるとみるみる消えていくのがおそろしいですね・・・。)基本的な用語でも、あまり使わないものや、専門外のものだと、スコーンと抜け落ちてしまっていたりします覚えた記憶はあるのに、思い出せなくてくやしかったりしますね。

ちゃんと答えられたときは、その分うれしいです。
「それ、勉強したんだよ~」
しみじみしてみたりして。(でも、打率低し・・・。)

ちなみに、「青天の霹靂ってなんていうの?」は、とある会議でいきなり社長さんに訊かれてあせりました。答えられてほっとしましたが・・・。英語だと”out of the blue”で、日本語の概念と近いから、覚えやすいですよね。

なんとかメンツを保てたわたしでありました。

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

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『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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