TRANSLATION

第11回 原著者にコンタクトをとる

寺田真理子

あなたを出版翻訳家にする7つの魔法

版権を押さえるためのもうひとつの方法が、原著者にコンタクトをとることです。

原書に著者の連絡先情報が記載されている場合もあります。たとえそこに情報がなくても、いまの時代であれば、著者のサイトやSNSを通じて連絡がとれるでしょう。それらを活用して、「あなたの本を翻訳したい」と著者に伝えておくのです。

『ハリー・ポッター』シリーズの翻訳を手がけた松岡佑子さんも、ご自身で著者に翻訳を申し出たといいます。作品に惚れ込んで熱意を伝えたことが、著者の心を動かしたのでしょう。

私の友人も、やはり著者にコンタクトをとりました。個人的な信頼関係ができたうえで、日本で出版できるところを探し始めたのです。

これは著者の立場になって考えてみるとわかりやすいと思います。著者にとって、自分の著作はとても大切な、自分の分身に等しい存在です。だからそれが外国で出版翻訳されるとなったとき、「誰がそれを一番大事にしてくれるだろう?」と考えるのです。

上手にプロモーションをしてたくさん売ってくれる、ということももちろん魅力ではあります。だけど創作に関わる人間であれば、その創作物の価値を損なうことなく、きちんと伝えてくれることをやはり大切にします。相手がそれを任せるに値するのかという、信頼の問題になるのです。

相手が大手出版社であれば、それはもちろん判断材料のひとつになるでしょう。だけどそれよりも、しっかりと翻訳してくれるのか、つまり「誰が翻訳するのか」が気になるところでしょう。そこで翻訳家が自分にコンタクトをしてきて、作品に思い入れを持ってくれていて、ぜひ自分がやりたいと言ってくれている、となれば心が動くものです。

著者の強い意向があれば、たとえ日本の出版社が他の翻訳家を検討していたとしても、やはり著者の意向が尊重されます。

ですから先々のことを考えて、原著者にあらかじめコンタクトをとることもひとつの方法です。

こうして版権を押さえたら、いよいよ日本で出版してくれるところを探していきましょう。そのためには、手がけたい原書がどんな本なのかを伝える企画書が必要です。それはどうやって用意すればいいのでしょう? 次回の連載でお伝えします!

Written by

記事を書いた人

寺田真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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