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第80回 書店でのNG行動

寺田 真理子

あなたを出版翻訳家にする7つの魔法

今回は、自分が手がけた翻訳書を出版した方がやってしまう「書店でのNG行動」についてお伝えします。

書店での本の置き方には、基本的なものとして棚差し、平積み、面陳があります。

棚差しとは、背表紙が見える状態で書棚に陳列するものです。

平積みとは、こうしてカバーを上にして、台に積み上げて陳列するものです。

(こちらは青山ブックセンターで『翻訳家になるための7つのステップ』を平積みにしていただいている様子です。ちなみに、勝手に撮影するのもNGですので、書店員さんに許可をいただくようにしてくださいね。)

面陳とは、このようにカバーが見えるようにして書棚に陳列することです。

(こちらはジュンク堂書店池袋本店での様子です。)

やはり平積みでドーンと置いていただいたり、

(こちらは、くまざわ書店武蔵小金井駅北口店で展開中の雷鳥社フェアの様子です。)

面陳にしていただいたりすると、うれしいものです。

だけどそうなっていない時に、自分が手がけた本を平積みのいちばん上に重ねたり、面陳になっている本をどかせたりして、

「勝手に平積み!」

「勝手に面陳!」

をしてしまう方がいるのです。軽い気持ちでやってしまうのでしょうが、これはNGです!

どの本をどこに置くか、書店員さんは驚くほどよく考えているものです。お客さんが入店してからの動線を考慮して、売りたいものを目につくように配置しているのです。ベテランになると「毎日来てくれるお客さんと対話する」つもりで売り場をつくっています。一冊一冊の配置が、お客さんとのコミュニケーションになっているのですね。このあたりのお話は『本を売る技術』にくわしいので、ご興味のある方はどうぞ。

そこまで徹底して配置しているのに、

「勝手に平積み!」

「勝手に面陳!」

なんてしてしまったら……。丁寧なコミュニケーションをとっている方たちのところにいきなりやってきて、その方たちが育んでいた関係を土足で踏みにじるようなものです。

「よっぽどこの本が好きな読者がやったんだな」

と好意的に受け止めてもらえるならいいのですが、おそらくは

「きっと関係者がやったんだな」

と思われて、いい印象は持たれないでしょう。そんな形で覚えられてしまうことは、避けたいものです。

最近では、書店員さんの役割も広がってきました。本屋大賞のように書店員さんによる賞の力が大きくなりましたし、書店員さん個人が与える賞が業界で注目されるようにもなりました。発売前のゲラを書店員さんに読んでもらったり、どのカバーデザインがいいか意見をもらったりすることまであります。実際、『翻訳家になるための7つのステップ』も、2種類のカバーデザイン案をお見せして、書店員さんのアドバイスをいただいています。日常的に読者と接している立場からの意見が、本をつくる現場でも重宝されているのです。

書店では、配置された一冊一冊の本の背後に、そんな書店員さんたちがいることをぜひ知っておいてくださいね。そして、書店員さんたちの思いを大切に行動していただけたらと思います。

※この連載を書籍化した『翻訳家になるための7つのステップ 知っておきたい「翻訳以外」のこと』が発売中です。本書の出版記念トークショー&サイン会を8月8日(土)18時から渋谷の大盛堂書店さまで開催いたします。詳細・お申込みはこちらからお願いいたします。

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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